今、改めて霊感商法等の悪質商法及び反社会的宗教活動による被害の問題の根本的解決を求める会長談話
霊感商法等の悪質商法及びその他反社会的宗教活動による被害の問題について、大きな社会的関心が集まり、その被害の深刻さが改めて顕在化してから、約2年が経過した。
この間に、旧統一教会の政界への侵食や、深刻な財産的被害が長期間継続することによって団体構成員自身のみならず、その子どもを含む家族の生活にまで深刻な影響が生じること、正体を隠しての伝道など、信教(信仰選択)の自由を侵害する勧誘方法、それがSNS等の利用でより高度化して露見しづらくなっていることなどが明らかとなった。さらには、いわゆる宗教等二世の方々が、精神面はもとより、場合によっては経済的・肉体的にも虐待を受けるなど、筆舌に尽くし難い体験を強いられている状況も、当事者自身による声によって明らかとなっている。
しかしながら、現在もなお、これらの顕在化した問題と深刻な被害は、根本的解決に至っているとは到底言えない。
当連合会は、2023年11月から12月にかけて、①「カルト問題に対して継続的に取り組む組織等を創設することを求める提言」(同年11月15日付け)で、反社会的宗教活動による被害の救済と防止には、その背景にあるカルト問題を含め、省庁横断的な常設対応組織を創設して抜本的な対策をとる必要があることを、②「宗教等二世の被害の防止と支援の在り方に関する意見書」(同年12月14日付け)で、児童福祉法・児童虐待防止法等の法改正の検討や、相談・支援体制の構築等の施策を講ずべきことを、③「霊感商法等の悪質商法により個人の意思決定の自由が阻害される被害に関する実効的な救済及び予防のための立法措置を求める意見書」(同年12月14日付け)では、個人の価値判断基準そのものを不当に変容させる勧誘手法等による継続的な寄附等の経済的被害に対応するための立法措置をとることを求めてきた。
2025年1月には、「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」がその附則に定められた施行後2年の見直し時期を迎える。同法については、正体や目的を隠した勧誘の禁止、助言の機会を奪うことの禁止、寄附の勧誘を受ける個人が合理的に判断することができない事情があることを利用するなどの不当勧誘の禁止(「つけ込み型不当勧誘」の禁止)など、反社会的宗教活動による被害の実態に合った、より実効的な内容への改正が必要である。
当連合会としても、1980年代後半から1990年代後半にかけて四つの意見書を公表してこの問題による被害実態とその対策、被害救済の指針等を明らかにしてきたが、遺憾ながら、それを社会に十分に浸透させることができなかった。かかる反省のもとに、当連合会は、この問題を再び風化させることのないよう、人権擁護を使命とする法律家団体として、不断の取組・活動に努める所存であり、国に対しては、霊感商法等の悪質商法及び反社会的宗教活動による被害の問題について、前記のとおりの立法措置を含む根本的解決を改めて求めるものである。
2024年(令和6年)7月3日
日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子