霊感商法及びその他反社会的な宗教的活動による被害実態の把握と被害者救済についての会長声明


本年7月8日、安倍晋三元内閣総理大臣が銃撃されたことを契機として、世界基督教統一神霊協会(現在の法人名は「世界平和統一家庭連合」、以下「旧統一教会」という。)の問題が様々指摘されている。


いうまでもなく、信教の自由は、憲法第20条に保障された権利として十分に保護されるべきである。しかしながら、宗教団体も社会の一員として関係法令を遵守しなければならないのは当然のことであり、仮に法令から逸脱する行為があれば、厳正に対処されなければならない。


当連合会は1987年7月に「霊感商法被害実態とその対策について」、翌1988年3月に「霊感商法被害実態とその対策について(その二)」と題する意見書を公表した。これらの意見書では、霊感商法に関わる販売業者群の背後に旧統一教会の存在が推認できることを指摘した上で、このような販売業者が、先祖や家族のことを思う消費者の心情や不安心理を巧みに利用して高額な商品を売りつけていること、全国的に同一の手口によって深刻な被害が多数発生していることなどについての報告を行った。そしてこれらの実態を踏まえ、当連合会として、司法・行政各部門はもとより弁護士会・弁護士個々人においても、毅然として対応すべきであることなどを提言した。


さらに、当連合会は、1999年3月にも「arrow_blue_1.gif反社会的な宗教的活動にかかわる消費者被害等の救済の指針」と題する意見書を公表し、宗教団体等による消費者被害を抑制するべく、相談事例や裁判例の紹介をするとともに宗教的活動に関わる人権侵害についての判断基準を解説するなどした。


しかしながら、今なお、霊感商法や不安心理を巧みに利用した過大な献金の要求等反社会的な宗教的活動に関わる深刻な被害は無くなっておらず、信者の子どもの生活や精神面まで苦境に陥らせる実態が続いている。


国は、このような状況を踏まえ、本年8月18日、法務大臣の主宰により「『旧統一教会』問題関係省庁連絡会議」を開催し、関係省庁が幅広く、被害実態の把握と被害者救済のための仕組みづくりを速やかに進めること及びその前提として情報提供のための集中相談を行うことを決定した。また、消費者庁は、「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」を立ち上げ、霊感商法等の消費者被害の発生及び拡大の防止を図る対策を検討するとしている。国のこのような取組は、被害者救済の第一歩として評価できるものであり、当連合会としても抜本的かつ実効的な解決策の構築に向けて、積極的に連携協力をしていく所存である。




2022年(令和4年)8月29日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治