民法(親子法制)等の改正に関する要綱に対する会長声明


2022年2月14日、法制審議会は、「民法(親子法制)等の改正に関する要綱」(以下「要綱」という。)を取りまとめた。


要綱が長年にわたって当連合会が求めてきた女性の再婚禁止規定(現民法733条)の削除や子に対する懲戒権の規定(現民法882条)の削除等を取りまとめたことについては、遅きに失したという側面はあるものの、歓迎するものである。しかし、児童虐待防止、無戸籍者対策としては不十分であり、生殖医療に関しては法整備を急ぐべきである。


まず、女性の再婚禁止期間は国連の女性差別撤廃委員会等からも廃止が勧告されていたものであり、今回規定が削除されたことは評価する。また、嫡出推定制度に関し、婚姻解消後300日以内に出生した子について、母が再婚した後に出生した場合には、後婚の夫の子と推定するものとしたことや、嫡出否認の否認権者を母と子にも拡張し、否認権行使の期間を3年に延長したことは、いわゆる300日問題の解決に向けて一定の効果が期待できる。そして、ある程度成熟した子が一定の場合に法定代理人に拠らずに自ら否認権行使できることとした点は、やや条件が厳しすぎるきらいはあるものの、社会的実態を伴わない戸籍上の父子関係を解消する手立てを設けたものであり、今回の要綱は無戸籍者解消に一定の効果が期待できるものと評価できる。


ただし、婚姻解消後、法律上の婚姻をしなければ救済されない点は、多様化する家族形態の観点からは疑問があり、何より父母が様々な事情で法律上の婚姻ができない場合に子を救済できない点で、無戸籍者対策としては不十分である。また、民法(親子法制)部会においては、別居等の後に懐胎したことが明らかな子については、強制認知の訴えに先立つ家事調停において夫の陳述を聴くことを要しない旨を定める案や、一定の資料が提出されれば夫の子ではない出生届を提出できることとする案などが検討されたが、いずれも採用されなかった。しかし、これらの提案は無戸籍者問題に対する効果的な解決策となり得たと思われ、引き続き検討すべきである。さらに、差別的な響きを残す「嫡出」の用語について、見直しがなされなかったことは遺憾である。


懲戒権の削除は、児童虐待の認知件数が増加し、悲惨な事例の報道も後を絶たない状況下において、当連合会が子に対する虐待の理由に使われるということを強く指摘し、その削除を求めてきていたことに応じたものであった。要綱には、懲戒権の削除のほかに、体罰の禁止及び子の人格の尊重や子の心身の健全な発達に有害な行為の禁止を民法に規定することもとりまとめられており、評価する。ただし、「子の心身の健全な発達に有害な行為」の禁止に関しては、禁止される行為が狭く解釈されることのないよう運用において課題を残している。


生殖医療技術を利用した場合の否認に関しても一定の検討がなされたことは評価できるが、要綱はいわゆる生殖補助医療特例法10条について嫡出否認権者に対応した手当を行う範囲に留まっている。生殖医療技術の適正な利用の基盤となる施術医療機関や情報の公的管理制度、利用可能な技術範囲、手続を定めた行為規制の整備を急ぐとともに、その整備の上で、部会で検討された論点を改めて議論することが必要である。


当連合会は、要綱に基づく今後の立法作業を注視するとともに、特に課題として残った点について国会において十分に審議され、児童虐待防止、無戸籍者解消、生殖医療に関する法整備に向けてさらなる取組がなされることを強く求めるものである。



 2022年(令和4年)2月16日

日本弁護士連合会
会長 荒   中