特定複合観光施設区域整備法案(いわゆる「カジノ解禁実施法案」)に改めて反対し、廃案を求める会長声明

本日、特定複合観光施設区域整備法案(いわゆる「カジノ解禁実施法案」)が衆議院で可決された。日本で初めて民間賭博を解禁することもありその条文数は251条と極めて多いにもかかわらず、衆議院の審議時間は20時間にも満たない。


当連合会は、これまで一貫してカジノの解禁に反対してきた。


我が国の刑法は、賭博行為を犯罪とし、これまで、公営ギャンブルについて、例外的に特別法で違法性を阻却する際には、目的の公益性、運営主体等の性格、収益の扱い、射幸性の程度、運営主体の廉潔性、運営主体への公的監督、運営主体の財政的健全性、副次的弊害の防止等を考慮要素として、慎重な検討が行われてきた。そのため、民間賭博が認められることはなかった。


しかし、カジノは、我が国で初めて民間賭博を公認し、民間事業者が、営利の目的でギャンブル事業を営むことを認めるものである。カジノ事業者は、カジノ行為粗利益の3割の納付金を義務付けられるとはいえ、その余の収益の使途は制限されない。また、顧客は、24時間営業のギャンブル施設において、最大3日、72時間も居続けることができることになる。一定の金額を預け入れた顧客に対しては、カジノ事業者から、資金の貸付けを行うことも予定されている。その際、年収の3分の1を超える貸付けを禁止する貸金業法の総量規制が適用されることもない。このような仕組みの下では、顧客をギャンブル依存症に陥らせるなどの弊害は大きい。


また、本法案によれば、カジノ事業者は、暴力団員又は暴力団員でなくなった日から起算して5年を経過しない者をカジノ施設に入場させてはならないとされているが、暴力団員の潜在化が進む中、入場者の全てについて、これらに該当するかどうかを逐一確認し、見抜くことは困難であり、反社会的勢力を完全に排除することはできない。カジノがマネー・ローンダリング等の違法な資金移動に利用されることも懸念される。


カジノを解禁することは、刑法が賭博を犯罪とし、刑罰をもって禁止している趣旨を没却し、法秩序全体の整合性を著しく損なう。昨年8月に実施された意見募集(パブリックコメント)においても67.1%、本年3月の世論調査でも65.1%がカジノ解禁に反対している。国民がカジノ解禁を支持していない中で、今後、参議院における審議では、以上の問題点と世論に配慮し、十分かつ慎重に検討される必要がある。


当連合会は、特定複合観光施設区域整備法案に改めて反対し、廃案を求めるものである。




  2018年(平成30年)6月19日

日本弁護士連合会      

 会長 菊地 裕太郎