「恵庭殺人事件」第2次再審請求棄却決定に関する会長声明

札幌地方裁判所(金子大作裁判長)は、本日、いわゆる恵庭殺人事件の第2次再審請求事件(請求人大越美奈子氏)について、再審請求を棄却する決定をした(以下「本決定」という。)。


恵庭殺人事件は、2000年(平成12年)3月16日に発生した殺人、死体損壊事件である。被害者の勤務先の同僚であった請求人に本件の嫌疑がかけられ、逮捕時からの一貫した無罪主張にもかかわらず、確定審においては、情況証拠のみで、請求人に対して懲役16年の有罪判決が言い渡された。


請求人は、第1次再審請求において、請求人が所持していた灯油10リットルでは本件の犯行は不可能であること、請求人にはアリバイが成立すること等を主張したが、裁判所は、灯油10リットルを人体にかけて燃焼した場合、人体の脂肪が溶け出して燃焼が継続するという現象(独立燃焼)が生じる可能性がある等という不合理な判断により、再審請求を棄却した。


第2次再審請求審において、札幌地方裁判所は、弁護人が提出した多数の鑑定等の新証拠について事実の取調べを行った。また、検察官は、最終意見書において、灯油10リットルを人体にかけて燃焼した場合に独立燃焼は生じ得ないとする弁護人の主張立証に対する反論を実質的に放棄するに至った。


それにもかかわらず、本決定は、死因に関する弁護側の法医学鑑定の証拠価値を否定し、死体の焼損状況について、条件によっては灯油10リットルを人体にかけて燃焼した場合に独立燃焼が生じる可能性がある等と判断し、請求人のアリバイの成立も否定して、再審請求を棄却したものである。


本決定は、弁護人が提出した鑑定の意義を全く理解せず、従前の裁判所と同様の不合理な判断を追認したものであり、新旧全証拠の総合評価を行っておらず、白鳥・財田川決定にも違反した不当決定であり、到底是認できない。


請求人は、逮捕から現在に至るまで、約18年間もの長期間にわたり身体拘束され続けており、速やかに再審を開始し、請求人に対して無罪判決が言い渡されなければならない。


当連合会は、引き続き恵庭殺人事件の再審を支援し、再審開始、無罪判決の獲得に向けて、あらゆる努力を惜しまないことをここに表明する。


  2018年(平成30年)3月20日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋