民法の一部を改正する法律及び同整備等に関する法律の成立についての会長声明


本年5月26日、民法の一部を改正する法律(閣法63号)及び同法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(閣法64号)(以下、両法律を一括して「本改正法」という。)が成立した。

民法(債権法)は、国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規律を定めるもので、同法制定後120年余りが経過したことから、その間の社会・経済の変化への対応を図り、国民一般に分かりやすいものとするなどの観点から改正されたものである。

本改正法は、従来の判例実務を明文化し、解釈に疑義のある点を明確にしたほか、かねてからその必要性を指摘されていた個人保証人の保護を拡充し、また、約款規制を新たに設けるなど、国民生活を守るための重要な改正がなされている点は高く評価できる。しかし、他方で、個人事業者が行う「事業に現に従事している」配偶者を経営者とみなして公証人による保証意思の確認なくして保証契約の締結を認め、また、約款規制の対象となる約款の範囲が限定されるなど、契約当事者の保護に欠ける面が残る。今後、本改正法に新設された規律についても、保証人保護の拡充や約款規制の実質化を図る解釈が求められるとともに、その実現へ向けての再改正も含めて不断の見直しが求められる。

さらに、本改正法の審議に際して改正の必要性について一定の理解が得られたものの、今回の改正では合意に至らなかった改正項目について、公正な取引社会の実現に向けて引き続き検討が継続されるべきである。とりわけ、保証人の責任制限、暴利行為の禁止、相手方惹起型の動機の錯誤、契約成立過程における情報提供義務・説明義務などについて、判例実務における今後の各法理の具体化・精緻化を踏まえ、その明文化を推進することを求める。


改正項目は200を超え、その内容も多岐にわたる。上記に述べた、個人保証制度の改正、約款規制の新設のほかにも、消滅時効や法定利率の改正など国民の生活や経済活動に与える影響は大きい。本改正法の施行期間は3年を超えない範囲で定めることとされているが、国民生活に与える影響の重大性に鑑み、改正内容を国民に周知することが求められる。ついては、法務省その他関係各機関におかれても、円滑な施行に向けて最大限の努力をされることを要望する。当連合会としても、国民に最も身近に存在する法律専門家として、本改正法の内容の周知に全力で取り組む所存である。


 

  2017年(平成29年)5月26日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋