「独立行政法人国民生活センター法等の一部を改正する法律」の成立に関する会長声明


2017年(平成29年)5月26日、第193回通常国会において、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(以下「消費者裁判手続特例法」という。)において認められている特定適格消費者団体による仮差押命令の申立てに当たって、独立行政法人国民生活センター(以下「国民生活センター」という。)において立担保ができるようにすることなどを内容とする「独立行政法人国民生活センター法等の一部を改正する法律案」が可決され、成立した。

この国民生活センターによる立担保の制度等は、財産の散逸・隠匿のおそれがある事業者からも消費者裁判手続特例法による被害回復を可能とするために必要不可欠な仕組みとして、当連合会においてもその実現を求めてきたものであり、同法案が成立したことは高く評価できる。

もっとも、具体的な制度内容については、今後の政府及び国民生活センターによる検討に委ねられているところ、適切な立担保の要件及び手続を定めることが求められる。特に、立担保の制度が実効的かつ円滑に活用されるよう、具体的制度設計に当たっては、裁判所に違法とされた仮差押命令により事業者が損害を被り担保が実行された場合であっても、特定適格消費者団体に故意又は重過失が認められない限り、特定適格消費者団体に対する求償が免除される仕組みとすべきである(2016年(平成28年)9月16日「消費者団体訴訟制度の実効的な運用に資する支援の在り方に関する検討会報告書についての意見書」)。

また、特定適格消費者団体や消費者被害回復・防止のための民間基金に対する直接の財政支援措置や、特定適格消費者団体の特定認定の有効期間の延長等についても、早急に検討が進められるべきである。

これらの課題は衆参両院における法案可決の際の附帯決議においても指摘されているところ、当連合会においても、これらの課題を踏まえ、国民生活センターによる立担保の制度が積極的に活用され、消費者被害の集団的な回復という消費者裁判手続特例法の目的が達成されるよう、引き続き積極的な取組を継続する所存である。


 

  2017年(平成29年)5月26日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋