東日本入国管理センターにおける被収容者の死亡事件に関する会長声明

2017年3月25日、東日本入国管理センターに収容されていた40代のベトナム人男性が死亡するという事件が発生した。報道等によれば、男性は遅くとも死の数日前から体調不良を訴えていたが、所内で医師の診察を受けた後、外部医療機関での診察を受けることなく、同日午前1時頃、意識不明の状態で見つかり、搬送先の病院で死亡が確認されたとのことである。

入管収容施設での死亡事件については、2014年3月、東日本入国管理センターに収容されていたイラン人男性とカメルーン人男性が相次いで死亡し、同年11月、東京入国管理局に収容されていたスリランカ人男性が死亡するという事件が発生している。

入管収容施設の被収容者に適当な医療措置を実施し、被収容者の健康を維持するのは、国の責務である(被収容者処遇規則30条、国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)規則24)。

当連合会は、人権救済申立てに対する勧告や会長声明を通じて、繰り返し入管収容施設被収容者に対する医療について、通院・入院等の必要のある者について仮放免を行うことを徹底すること、社会一般の水準と同様の水準の医療の提供及びこのような医療へのアクセスが阻害されないこと、死亡事故の発生原因の調査及び公表、再発防止策の策定、適切な医療体制の構築を求めてきたところである(2014年11月7日付け「入管収容施設における医療問題に関する人権救済申立事件(勧告・要望)」、2015年1月14日付け「東京入国管理局における被収容者の死亡事件に関する会長声明」等)。

法務省は、2014年11月、過去の死亡事件について、内部調査の結果を公表し、入管収容施設における医療態勢や、被収容者に対する容態観察中の対応について、処遇改善の方針を示した。

にもかかわらず、今回、またしても入管収容施設において死亡事故が発生したことは、甚だ遺憾であるといわざるを得ない。法務省入国管理局は、今回の事件について、通院・入院等のために仮放免を行うべきでなかったか、医療措置や容態観察に問題がなかったか、処遇改善の方針は活かされていたのか等について、入国者収容所等視察委員会など第三者機関により徹底的かつ迅速な調査を実施し、その調査結果を公表した上で、具体的かつ実効的な再発防止の措置を速やかに講じるべきである。当連合会としても、再発防止措置の構築に協力していく所存である。

 

  2017年(平成29年)4月12日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋