司法修習生の経済的支援の制度方針の発表にあたっての会長談話
本年12月19日、法務省は、司法修習生の経済的支援策に関し、法曹三者での協議を踏まえ、平成29年度以降に採用される予定の司法修習生(第71期以降)に対する新たな給付制度を新設する制度方針を発表した。
2011年に司法修習生に対する給費制が廃止され、修習資金を貸与する制度に移行してから5年が経過した。この間、司法修習生は、修習のために数百万円の貸与金を負担するほか、法科大学院や大学の奨学金の債務も合わせると多額の債務を負担する者が少なからず存在する。近年の法曹志望者の減少は著しく、このような経済的負担の重さが法曹志望者の激減の一因となっていることが指摘されてきた。
司法制度は、三権の一翼として、法の支配を社会の隅々まで行き渡らせ、市民の権利を実現するための社会に不可欠な基盤であり、法曹は、その司法を担う重要な役割を負っている。このため国は、司法試験合格者に法曹にふさわしい実務能力を習得させるための司法修習を命じ、修習専念義務をも課している。ところが、法曹養成の過程における経済的負担の重さから法曹を断念する者が生じていることは深刻な問題であり、司法を担う法曹の人材を確保し、修習に専念できる環境を整備するための経済的支援が喫緊の課題とされてきたものである。
この間、多くの国会議員から、司法修習生への経済的支援の創設に賛同するメッセージが寄せられ、また国民からも多数の署名が寄せられるなど、新たな経済的支援策の実現を求める声が高まっている。
このような状況を踏まえ、法務省が新たな経済的支援策についての制度方針を発表した意義は重要である。日弁連はこれまで、法曹人材を確保するための様々な取組を行ってきており、その一環として、修習に専念しうるための経済的支援を求めてきたものであり、今回の司法修習生に対する経済的支援策についてはこれを前進と受け止め、今後も、法曹志望者の確保に向けた諸々の取組を続けるとともに、弁護士及び弁護士会が司法の一翼を担っていることを踏まえ、今後もその社会的使命を果たしていく所存である。
2016年(平成28年)12月19日
日本弁護士連合会
会長 中本 和洋