世界経済フォーラムのジェンダーギャップ指数に対する会長談話


世界経済フォーラム(WEF、本部・ジュネーブ)は、2016年10月26日、2016年の各国の男女平等度を指数化した「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書」(以下「ジェンダーギャップ報告書」という。)を発表した。同フォーラムは、毎年1月、スイスのダボスにおいて、世界各国の政財界のリーダーや学者らが参加して年次総会を開催する権威ある国際機関である。

同報告書において、日本は、男女格差を示す指数において、世界144か国中111位となり、145か国中101位であった2015年に比べ、順位を10位落とした。分野別の順位は、政治分野103位、経済分野118位、教育分野76位、健康分野40位であり、特に政治分野では、女性の国会議員比率が122位と極めて低い。また、経済分野では、労働参加、賃金、所得、昇進、専門職・技術職の全ての項目で低迷し、総合順位は、2015年と比較して106位から118位へと大きく落ち込んだ。教育分野の順位が低いのは、高等教育が103位だったためである。

日本政府は、平成27年12月25日に第4次男女共同参画基本計画を閣議決定し、「女性の活躍を阻害している要因」について、「固定的な性別役割分担意識、性差に関する偏見や様々な社会制度・慣行がある」と分析し、長時間労働、転勤、年功序列等の男性中心型労働慣行の見直し、女性の政治分野や科学技術分野への参画推進などに取り組むとした。そして、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)を制定し、国、自治体、民間企業に対し、数値目標を盛り込んだ行動計画の策定、公表等を義務付けた(従業員300人以下は努力義務)。

しかし、上記法律を実効的なものとするためには、前記労働慣行の見直しを具体化する措置をはじめ、同一価値労働同一賃金原則の確立、間接差別の禁止拡大、コース別雇用制度の見直し等の法的措置が必要である。また、我が国における固定的な性別役割分担意識に基づく社会制度・慣行は、職業生活のみならず、社会のあらゆる分野にはびこっており、その見直しには、男女平等教育、国、地方自治体、民間企業における積極的差別是正措置の導入、税・社会保障制度におけるモデル世帯の見直し等、幅広い取組が不可欠である。

当連合会は、日本政府に対し、ジェンダーギャップ報告書の順位及び指数について誠意をもって受け止め、男女間の格差解消を引き続き優先課題とし、積極的に取り組むとともに、上記社会制度・慣行に広く目を向け、より実効性のある具体的措置及び施策をとるよう求めるものである。

当連合会も、あらゆる分野の男女間の格差解消と実質的平等の実現に向けて、実効的な立法措置や諸施策の提言を引き続き行うとともに、当連合会内の男女共同参画の取組を推進していく所存である。

 

  2016年(平成28年)11月14日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋