中国政府の邦人に対する死刑執行に関する会長声明

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本年10月20日、中国政府は、覚せい剤の密売に関わった罪で死刑判決を受けた日本人の男性に対し、死刑を執行した。これは、2010年4月に4名、2014年7月25日に1名、そして2015年6月23日に1名の日本人に対して死刑執行がなされたのに続き、日本人に対する7件目の執行となる。


死刑は、人の生命を不可逆的に奪う究極の刑罰であって、その過ちは回復不可能なものである。死刑制度を存続させれば、死刑判決を下すか否かを人が判断する以上、えん罪による処刑を避けることができないこと等を理由に、当連合会は、本年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを明らかにした。


今や死刑は国境を越えた人権問題である。国際人権(自由権)規約は、死刑の廃止が望ましいことを示しつつ、たとえ死刑を存置する場合においても、死刑は最も重大な犯罪についてのみ科することができる(同規約第6条第2項)とし、さらに、国際人権(自由権)規約委員会は、薬物関連犯罪をはじめとして、人の死という結果を伴わない犯罪は「最も重大な犯罪」には当たらないとの見解を繰り返し明らかにし、日本政府に対しても2014年7月24日に「19の死刑相当犯罪のうちいくつかが、死刑を『最も重大な犯罪』に限るとする規約の要件を満たしていないこと」について懸念を表明している。


よって、当連合会は、日本政府に対し、上記「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」における各改革提言を早急に検討するとともに、国際人権(自由権)規約をはじめとした国際人権基準を遵守して国内外の適切な対応を行うよう要請する。

 

  2016年(平成28年)11月10日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋