公益通報者保護の実効性を高める法改正を求める会長声明

2016年3月22日、消費者庁に設置された公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会は、第1次報告書(以下「本報告書」という。)を取りまとめ、更に検討を加えるため、同年4月22日に学識経験者及び実務専門家によるワーキンググループを設置し、公益通報者保護法(以下「法」という。)における通報者保護の要件・効果等につき検討を開始した。

当連合会は、2011年2月18日付け「公益通報者保護法の見直しに関する意見書」及び2015年9月11日付け「公益通報者保護法日弁連改正試案」等により、通報者保護の要件が狭く複雑なため、公益通報を委縮させかねないことを指摘するなど、公益通報者の保護に必要な改正の内容を提言してきた。

本報告書は、当連合会がこれまで求めてきた法改正のうち、通報者に退職者を加えること、通報対象事実の拡大、不利益取扱い禁止の違反に対する行政措置の導入、守秘義務の導入については積極的に検討する方向性を示したものの、通報者に役員や取引先を加えること、通報先となる事業者の範囲の拡大、通報者保護の要件緩和、通報のための資料収集行為につき民事・刑事上の免責規定導入、通報を受け付けた行政機関の応答義務等については、両論併記の上、引き続き検討するというにとどまった。

なお、本報告書が、消費者庁に、処分権限の有無にかかわらず通報を受け付ける窓口を設置し、調査・処分の権限を有する各府省庁に振り分けて適切な通報対応を促す仕組みに加え、消費者庁自らが調査を実施する仕組みを設けることにつき検討するべきとしている点は評価される。当連合会も、消費者庁設置に際し、消費者庁に公益通報受付窓口を設置するよう求めているが(2008年11月19日付け「消費者安全法案についての意見書」)、具体的制度として実現されるべきである。

施行後5年を目途とする見直しが附則に明記されたにもかかわらず既に10年を経過し、事業者の不祥事が相次ぐ一方で公益通報は活用されていない現状を考えれば、当連合会の提言を真摯に受け止め、ワーキンググループにおいて早期に充実した検討を行い、政府において通報者保護を実効あるものとする法改正案を速やかに取りまとめるべきである。


 

 


 

 2016年(平成28年)6月9日

日本弁護士連合会
 会長 中本 和洋