「総合法律支援法の一部を改正する法律」の成立に当たっての会長声明

本日、「総合法律支援法の一部を改正する法律案」が参議院において全会一致で可決の上、成立した。

 

本改正法は、2014年(平成26年)に法務省に設置された「充実した総合法律支援を実施するための方策についての有識者検討会」の提言を踏まえたものである。当連合会は、本改正法において、認知能力の不十分な高齢者・障がい者が、福祉関係者等の支援者を介して、資力を問わない法律相談を受けられる仕組みを創設したこと、大規模災害被災者、DV・ストーカー・児童虐待等について、同じく資力を問わない法律相談を制度化したこと等は、民事法律扶助制度による救済の範囲を広げるものとして評価する。

 

もっとも、高齢者・障がい者、DV・ストーカー・児童虐待等の被害者の法律相談について、資力がある場合には負担金を支払うものとされていること、高齢者・障がい者の支援において弁護士費用等の立替援助の対象を一定の行政不服申立手続に限定していること、DV・ストーカー・児童虐待等の被害者支援のための弁護士費用等の立替援助は法改正に含まれなかったこと、対象となる被害者の範囲が限定されていること等、今回の改正には、前記有識者検討会の検討結果から後退し、不十分と思われる点がある。

 

法務省及び日本司法支援センター(法テラス)は、これらの点に関し、衆議院・参議院において、本改正法の施行に当たり格段に配慮をすべきである旨の附帯決議が付されていることに十分に留意し、本改正法の適切な運用を図るとともに、改正後の実施状況を踏まえながら、更なる法改正を目指すべきである。

 

当連合会は、政府に対して、本改正法に基づく平成28年熊本地震の被災者に対する無料法律相談を早期に実施できるよう必要な措置を早急に講じることを求めるとともに、国民の司法アクセスがさらに拡充されるよう、法テラスと連携して、全力を尽くしていく所存である。

 


 

 2016年(平成28年)5月27日

             日本弁護士連合会
           会長 中本 和洋