北星学園大学及びその教員等に対する脅迫行為に関する会長談話
過去に日本軍「慰安婦」問題に関する記事を執筆した元朝日新聞記者が教員として勤務する北星学園大学(北海道札幌市)に対し、学生に危害を加えることを告げて元記者の解雇を求める等の脅迫が行われていることに関して、同大学は、2014年12月17日、2015年度も元記者の雇用を継続する見解を公表した。
元記者が日本軍「慰安婦」問題に関して過去に記事を書いたことをとりあげ、勤務先である同大学に対し、元記者を「なぶり殺しにしてやる」「辞めさせろ。辞めさせなければ、学生を痛めつけてやる」等と記載された文書が送付され、要求に応じなければ大学の学生にまで危害を加える旨の脅迫が行われていた。また、脅迫行為は、元記者のみならずその家族の実名や顔写真等がインターネット上に晒され、脅迫的文言までもが書き込まれる事態となっていると報じられている。
これらの行為は、刑法上の脅迫罪や威力業務妨害罪に該当する犯罪行為であるにとどまらず、大学教員としての教育・研究活動とは何ら関係のない理由により元記者の解雇を求めるものであり、学問の自由や大学の自治を脅かすものである。さらに、元記者が過去に書いた記事を言論により批判するのではなく、記事の内容を理由に脅迫することは、記者の取材・報道を萎縮させかねず、そのことは国民の知る権利も侵害し、ひいては民主主義社会の基盤そのものを崩壊させるおそれがあるものであり、断じて許すことができない。
このたび、同大学が上記脅迫行為に屈せず、元記者の雇用継続を決めたことは、日本国憲法が定める学問の自由、大学の自治、表現の自由を守り抜いたものとして高く評価する。
当連合会は、同大学に加えられたような卑劣な脅迫行為を断固許さない意思を表明するとともに、取材・報道の自由及び知る権利、そして民主主義社会を守るべく、今後も全力を尽くすことを改めて確認する。
日本弁護士連合会
会長 村 越 進