内閣府の消費者問題・食品安全機能を消費者庁に移管することについて慎重な審議を求める会長声明

 

本年11月13日、自由民主党行政改革推進本部において、「内閣官房・内閣府のスリム化について(案)」がとりまとめられ、同月18日、同党総務会において了承された。


同案には、いわゆる内閣府スリム化の一環として、内閣府の消費者問題・食品安全機能を消費者庁に移管することが含まれている。現在、内閣府の消費者問題・食品安全機能は、消費者委員会と食品安全委員会が担っているが、同案では食品安全委員会の事務は移管対象から除かれているため、消費者委員会が消費者庁に移管される主な対象となるものと考えられる。


しかしながら、消費者委員会は、消費者庁を含む消費者行政全般の監視役を担う重要な組織として、消費者庁創設と同時に、消費者庁から切り離し独立した機関として創設されたものである。その後、これまでの約5年間、消費者委員会は、独立行政法人国民生活センターの分割統合問題、特定商取引法の指定権利制に関する問題、地方消費者行政の充実強化等、様々な重要論点について意見を表明してきた。これらの消費者委員会の意見表明を契機として、各論点についての透明で活発な議論が民主的に行われ、消費者行政全体の質の向上につながったケースも少なくない。また、他省庁と並列の関係にある消費者庁の所管を超えて省庁横断的な論点にも言及することで、行政全体に消費者の視点を浸透させることに役立ってきた。


こうした消費者委員会の役割に鑑みれば、その事務局体制の整備や所管大臣の見直し等、より一層の機能強化・独立性強化こそが強く望まれるのであり、当連合会もそのような意見表明を行ってきたところである。しかるに、消費者委員会が消費者庁に移管され、その一審議会に位置付けられることになれば、消費者庁に対しての監視・提言機能のみならず、他省庁に対しての監視・提言機能が大きく抑制されてしまうことが強く懸念される。


よって、今後の内閣府のスリム化の議論を進めるに当たっては、消費者委員会の重要性に十分留意した上で、その機能を低下させることのないよう、慎重な審議を求める。


 

 

   2014年(平成26年)12月17日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越  進