民法(債権関係)改正法案に約款に関する法規範を規定することを求める会長声明

2009年(平成21年)10月の法務大臣の諮問に対して、法制審議会において、「民法(債権関係)の改正に関する要綱」の取りまとめが進められている。来年2月に開催される法制審議会において要綱が決定された後、法務大臣に答申され、民法改正法案の国会提出が予定されている。


ところが、法制審議会民法(債権関係)部会が2014年(平成26年)8月26日に決定した「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」では、約款(定型約款)に関する法規範の内容について、同日の部会審議において合意に至らず、継続審議となった。


現代社会では、契約の一方当事者が作成した約款を使用した取引が広く行われている。それにもかかわらず、現行民法には約款に関する法規範が存在せず、約款の法的拘束力の要件・効果は不明瞭である。したがって、市民生活に関わる基本的な民事ルールを定める民法において、約款に関する定義規定、組入要件、不意打ち条項禁止、不当条項規制、約款変更に関する規定を設け、約款が法的拘束力を有するための要件や範囲を法律で定めておくことは、約款使用者に約款取引の安定性をもたらすとともに、相手方の保護にも資する。


さらに、約款に関する法規範を民法に規定することの必要性・有用性については、法制審議会民法(債権関係)部会におけるこれまでの審議において十分に確認されており、また、社会においても広く認識されるに至っている。


よって、当連合会は、現代の約款取引の重要性に鑑み、適正な契約社会の実現に向けて、民法(債権関係)改正法案に、約款に関する適正な法規範を規定すること、その前提として、法制審議会民法(債権関係)部会及び法制審議会において、かかる法規範を要綱案及び要綱に盛り込むことを強く求めるものである。
    

 

 2014年(平成26年)11月14日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越   進