秘密保護法施行令(案)等に対するパブリックコメントの検討手続の公開を求める会長声明
本年8月24日、特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)の施行令(案)及び運用基準(案)等についてのパブリックコメント(意見募集)が締め切られ、2万3820件もの意見が寄せられた。この数は、施行令案や運用基準案等に対するパブリックコメントとしては例外的に多い件数であり、秘密保護法に対する市民の深い懸念が示されたものと推察できる。
当連合会は、秘密保護法が制定された後も、同法は、①違法・不当な特定秘密の指定を禁止する明文規定がないこと、②多くの特定秘密が市民の目に触れることなく廃棄されることとなる可能性があること、③特定秘密の指定等を監視する独立した公正な第三者機関が存在しないこと、④内部通報の実効性が担保されていないこと、⑤適性評価制度は評価対象者やその家族等のプライバシーを侵害する可能性があること、⑥国会には特定秘密が必ずしも提供されないこと、⑦刑事裁判においても特定秘密が必ずしも提供されないこと、⑧取材の自由及び報道の自由が脅かされ、知る権利が侵害されるおそれがあること、⑨国連国際人権(自由権)規約委員会も秘密保護法が国際人権(自由権)規約第19条に抵触するとの懸念を表明していることなど、多くの問題を指摘し、廃止を含む抜本的な見直しを強く求めてきた。
この度、公表された秘密保護法施行令(案)及び運用基準(案)等によっても、当連合会が指摘してきた問題点は何ら解消されておらず、むしろ深刻な人権侵害の懸念が浮き彫りになったと考える。
政府は、情報保全諮問会議において、前記パブリックコメントの意見について審議し、今秋には施行令及び運用基準等について閣議決定を行う予定とされている。
2013年に実施された「特定秘密の保護に関する法律案の概要」に対するパブリックコメントの結果については、極めて概括的な意見しか公表されず、また、これらの意見は法案に全く反映されなかった。
当連合会は、政府に対し、今回のパブリックコメントに示された意見を重く受け止めるよう求め、かつ、次の2点を強く求めるものである。
1 前記パブリックコメントについて、寄せられた意見の詳細な内容と意見ごとの件数を明らかにすること。
2 前記パブリックコメントを審議する情報保全諮問会議の議事を公開すること。
日本弁護士連合会
会長 村 越 進