定住外国人生活保護申請却下事件最高裁判決に関する会長談話

本年7月18日、最高裁判所は、永住者の在留資格を有する外国人が生活保護申請の却下処分取消を請求した事件において、当該外国人の請求を認めた福岡高等裁判所の判決を破棄し、請求を認めないとする判決を言い渡した。

 

生活保護法は、貧困に陥り、自力では生計を維持できない人々に対して、国の責任において、健康で文化的な最低限度の生活を保障すること等を目的としており、その対象は形式的には国民とされているものの、運用上、永住者等の定住外国人については、行政措置として日本国民に対する取扱いに準ずるものとして、生活保護の対象とされてきた。

 

当連合会はこれまでも、宣言等により、社会保障制度全般について、外国人に対しても可能な限り日本人と同様の保障を及ぼすことなどを提言してきた。多民族・多文化の傾向が急速に進展する日本にあって、健康で文化的な生活を営む生存権を保障する憲法25条、個人の尊厳原理に立脚する憲法13条、全ての者に自己及び家族のための相当な生活水準についての権利を認め、締約国にこの実現を確保するための適当な措置を求めている国際人権(社会権)規約11条等に照らせば、国及び地方自治体には、貧困の連鎖を断ち切り、全ての人の尊厳に値する生存を実現する責務がある。この観点からは、国及び地方自治体は、外国人に対しても、できる限り日本国民と同様の保障を及ぼすべきである。

 

本判決は、外国人は現行の生活保護法の適用の対象には含まれず、同法に基づく受給権を有しないとしたものではあるが、他方、永住者等の定住外国人に対し、行政措置による保護を実施することを否定したものではなく、この判決によって、定住外国人に対する行政措置による保護が後退することがあってはならない。

 

当連合会は、国及び地方自治体に対し、今後も、貧困に陥り、自力では生活できない定住外国人に対する生活保護の措置を行うこと、及び、生活保護法をはじめとする法令の改正により、外国人を含む全ての人を生存権の享有主体として明記することを要望するものである。

 

 

 2014年(平成26年)7月25日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越  進