国会法改正案の成立に際し、特定秘密保護法の年内施行に反対し、改めてその廃止を求める会長声明
政府与党は、情報監視審査会の設置に関する規定を定める国会法等の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)を、通常国会の終盤に国会に提出し、ほとんど審議することなく成立させた。
昨年12月6日に成立した特定秘密保護法(以下「秘密保護法」という。)については、国会審議の過程で、不適正な秘密指定等により国民の知る権利等が侵害される懸念が国民や国会議員から表明された。改正法案に示された情報監視審査会は、そのような懸念を受け、秘密保護法上の特定秘密の指定等を監視するために設置されるものとされた。
当連合会は、改正法案の上程に際し、6月11日付けで会長声明を発し、改正法案成立後の国会法102条の15が、特定秘密の提出等が我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがあると行政機関が判断した場合には、国会に特定秘密が提出等されない旨定めていることは、秘密保護法10条の定めと同様であり、情報監視審査会を設置しても、十分な監視機能が期待できないことを指摘し、これら問題点について十分な議論がなされることを求めた。しかしながら、これらの問題点が克服されず、また、修正案も提案されていたにもかかわらず、十分な国会審議もなく、政府与党が性急に改正法案を成立させたことは誠に遺憾である。
今国会においては、多くの市民から秘密保護法の廃止を求める請願署名が提出され、また多くの団体から同様の要望が出されていた。さらに、複数の野党による共同提案で秘密保護法の廃止法案が国会に提出された。
このように、多くの市民も野党も、改正法案の成立によっても秘密保護法の問題点を全く払しょくできていないことから、同法の廃止を強く求めているところである。
当連合会は、政府が秘密保護法施行に向けて準備を進めている秘密の指定と解除の基準作りなどについても、法律家としての立場から意見を述べ続けていく所存であるが、本法案の審理過程においても、秘密保護法が抜本的に改正されなければ、恣意的な特定秘密指定の危険性は払しょくされないことが明らかになったものと考える。そのため、多くの市民が人権侵害の発生を懸念している秘密保護法については、年内施行のための諸手続を拙速に進めることに反対し、その早期廃止をあらためて強く求めるものである。
日本弁護士連合会
会長 村 越 進