「東日本大震災復興特別区域法の一部を改正する法律案」の成立に当たっての会長声明
本日、東日本大震災における復興事業用地の取得に関し、東日本大震災復興特別区域法の一部を改正する法律案(以下「特区法改正案」という。)が参議院本会議において可決され、成立した。
現在、特に、太平洋沿岸部の地域を中心に、復興事業用地の確保が難航し、それが被災地の復興の遅れにつながっており、抜本的な対策を講じることが求められていた。
特区法改正案については、本年3月25日以降、与野党間において積極的な協議がなされ、法案成立に至った。成立した改正特区法は、実質的には土地収用法上の緊急使用制度の要件を緩和するものであり、早期の工事着工を可能にし、かつ自治体の負担を軽減し、被災地の意向を一定程度反映するものである。
また、特区法改正案の成立に先立ち、衆議院東日本大震災復興特別委員会において、東日本大震災の被災地における復興整備事業の用地取得の更なる迅速化に関する件として、①土地収用法による事業認定及び収用裁決申請において、任意交渉を行うことを必須の前提とする運用を行わず、周辺状況等も踏まえ、柔軟に運用すること、②緊急使用の申立・許可に伴う土地所有者等への通知や損失補償支払に当たっての土地所有者等の調査義務については、登記簿、戸籍、住民票等の公簿で確認できる範囲で足りるとするなどの柔軟な運用を行うこと、③緊急使用の期間1年が経過してもなお、収用裁決がなされず、緊急使用に係る事業の使用権限が失効してしまうことがないよう、合理的な範囲内で最大限柔軟かつ効率的な運用に努めること等が決議されたことは重要であり、用地取得の迅速化のための大きな前進であると評価できる。
しかし、実際の復興事業用地取得の場面において、前記決議に沿った運用が現実になされることが大前提であり、前記決議の趣旨を十分に踏まえた運用指針等を早期に策定することが不可欠である。
また、復興に際して、住民の意思を適切に取り入れることは極めて重要であるが、特区法改正案では条文上その保障についての規定がなく、今後の課題として残っているといわざるを得ない。この点については、当連合会が本年3月19日に取りまとめた「復興事業用地の確保に係る特例措置を求める意見書」のとおり、復興特区法に基づく復興整備協議会を活用する等の方法により、住民意思の反映の機会を確保すべきであると考える。
国は、東日本大震災発生から3年が経過した現時点において、被災地の円滑かつ迅速な復興は、被災地の復興という公益だけでなく、個々の被災者の生存権及び幸福追求権に直結する重要な利益となっていることを十分に認識し、真に被災地の復興に資する施策を推進すべきである。
当連合会は、改正特区法について、その運用・進捗状況を、真に被災地の円滑かつ迅速な復興に資するか否かという視点で注視し、その進捗状況によっては、運用改善や、前記意見書のとおりの抜本的な対策の検討も積極的に求めていく所存である。
日本弁護士連合会
会長 村 越 進