「姫路郵便局強盗事件」再審請求棄却決定に関する会長声明

本年3月28日、神戸地方裁判所姫路支部は、いわゆる「姫路郵便局強盗事件」に関する再審請求事件につき、再審請求を棄却する旨の決定を行った。


本件は、2001年(平成13年)6月19日、兵庫県姫路市内にある郵便局に、雨合羽及び目出し帽等を着用し、模造けん銃を持った2人組の黒人男性が押し入り、2275万円余りの現金を強奪したという事件であり、ナイジェリア人である請求人が実行犯の一人として逮捕・起訴された。


本件においては、犯人を特定するに足りる指紋、毛髪及び体液等の証拠物並びにこれらについてDNA型鑑定等の鑑定を実施した結果を記載した鑑定書等の客観的証拠が多数存在するはずであるが、請求人が有罪とされた裁判手続では全く提出されていない。しかも、請求人の本件への関与については、請求人のみならず、本件の実行犯であることを認めているナイジェリア人の男性も、一貫して否認していた。しかし、第一審の神戸地方裁判所姫路支部は、2004年(平成16年)1月9日、請求人を実行犯の一人と認定のうえ、被告人に対して懲役6年の有罪判決を言い渡した。その後、控訴及び上告を棄却され、2006年(平成18年)4月25日、第一審の有罪判決が確定した。


これに対し、請求人はその後も無実を訴え、服役後の2012年(平成24年)3月2日、神戸地方裁判所姫路支部に再審請求を行った。そして、2013年(平成25年)4月19日には、当連合会もその支援を決定し、本件再審請求の支援を行ってきた。


今回の決定は、請求人が使用・管理していた倉庫内から被害品である現金が発見されたという事実や、請求人が購入していた自動車等が犯行に使用され、その後、それが上記倉庫内に置かれていたという事実等から、請求人が犯人であることが強く推認され、仮に実行犯である2人の黒人の中に請求人が含まれていない可能性があるとしても、請求人が実行犯人ではない共犯者の一人であることの推認が妨げられることはないとして、再審請求を棄却したものである。


しかし、実行犯でない可能性があるとしても共犯者の一人であるから請求人の犯人性は否定されないというのは、確定判決が認定していない事実を新たに認定するものにほかならない。確定判決は、請求人を実行犯の一人として有罪認定を行っているのであるから、請求人が実行犯であることに合理的な疑いが生じた場合、確定判決の有罪認定を維持することはできないはずである。


そして、本件の審理においては、実行犯が着用していた2つの目出し帽のいずれからも請求人のDNA型は検出されず、目出し帽の付着物からも請求人とは一致しないDNA型が検出された旨の鑑定書が提出される等、客観的証拠によって第三者が実行犯であるとの疑問が提起されているのであるから、請求人が実行犯であることについては、他に存在するはずの客観的証拠も含めて十分に検討する等、審理を尽くす必要があった。


しかし、裁判所は、弁護団の再三の要請にもかかわらず、検察官に対して証拠開示の勧告等を行うこともなく、進行協議等の場を持つこともないまま、書面審理のみで、事前の連絡もなく請求人の再審請求を棄却したものであって、不当極まりないものである。


弁護団は、直ちに即時抗告を行うことを決定した。当連合会は、即時抗告審において検察官手持ち証拠の開示等必要かつ十分な証拠が開示され、充実した審理が行われることを求めるとともに、今回の決定が取り消され、再審開始が決定されるものと確信している。


当連合会は、今後も請求人が再審無罪判決を勝ち取るまで、あらゆる支援を惜しまないことをここに表明する。



 2014年(平成26年)4月2日

  日本弁護士連合会
  会長 村 越   進