国連人権理事会における日本の普遍的定期的審査に関する日弁連コメント

2012年(平成24年)11月1日

日本弁護士連合会

 

 

 

 

国際連合人権理事会の第2回普遍的定期的審査(以下「UPR」という。)第14回作業部会において、昨日(ジュネーブ時間10月31日午後)、日本の人権状況について審査が行われた。


UPRとは、全国連加盟国の人権状況を、国際連合憲章、世界人権宣言、及び審査対象国が締約国である人権諸条約等に照らして、4年ごと(今回から4年半ごと)に審査する制度で、2008年から国連人権理事会で実施された。日本は、2008年に審査を受けており、今回は、二度目の審査となる。

 

1 当連合会の取組


当連合会は、日本の審査が行われるにあたり、以下の事前準備を行ってきた。


(1) 本年4月、国連人権高等弁務官事務所に対し情報提供を行った。この情報提供には、前回のUPRでの勧告に対する日本政府のフォローアップの状況や、各人権条約の審査における総括所見との比較検討、及び前回審査以降の日本政府の人権に関する施策についての検討が含まれている。また、新たに、福島原子力発電所事故に関し、生命及び健康に対する権利の侵害や不十分な情報公開等の人権諸問題の解消、表現の自由や信教の自由に対する不当な制約の解消、リーマンショック以降の長時間労働非正規労働化・貧困化の増加や生活保護問題に対する施策、外国人研修・技能実習制度の廃止等を指摘した。


(2) 本年8月30日には、ジュネーブで事前セッションが開催され、約30か国の政府代表部に対して、当連合会として勧告に盛り込むべきと考えられる内容のプレゼンテーションを実施した。


(3) また、在日公館に対して当連合会の意見書等の資料を送付するとともに、9月27日には、在日本各国公館に向けたブリーフィングを実施し、5か国からの出席者と意見交換を行った。

 

2 今回のUPRにおける各国のコメント


今回の審査で日本に対して実際に発言したのは、前回よりも多い79か国であった。


多くの点につき意見が寄せられたが、特に言及する国が多かった課題は、女性に対する差別解消に関するさらなる取組、死刑の執行停止及び廃止についての国民的議論の促進であった。このほか、国内人権機関の設置の実現、すべての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する国際条約の批准、児童ポルノの規制や性的搾取の防止を含む子どもの権利保護の改善、人身取引へのさらなる取組、包括的な差別禁止法の制定、「日本軍慰安婦」問題の解決等についても意見が表明された。また、当連合会が以前から取り組んできた代用監獄の廃止や勾留状況の改善についても、少なくとも6か国が言及した。なお、福島の原発事故に伴う人権侵害については、1か国が特に子どもの健康状態に関する懸念を表明した。

 

3 今後の展望


審査の結果は、2013年2月から3月に行われる国連人権理事会本会議において、日本に対する所見や勧告を含む結論として採択され、その際、日本政府から所見や勧告に対する意見が述べられることが予定されている。審査を通じて国際社会から懸念が表明された人権問題の解決に向けて、日本政府が2008年の第1回審査の際には受け入れなかったものも含め、全ての所見や勧告を積極的に受諾し、改善に向けて一歩を踏み出すことこそがUPRの本来の目的にかなうと考えられる。


4年半後に再び行われる予定の次回審査では、より実質的な市民社会の参加を実現し、実り多き議論が展開されるよう祈念する。国連加盟国による相互審査(ピアレビュー)であるUPRと、各条約機関による専門的な審査を経た総括所見の相乗効果により、日本の人権状況のより一層の改善を図ることが望まれる。