法科大学院に関連する財政支援を求める声明

現在、臨時国会で法科大学院関連3法案が審議されている。これらの法案は、司法試験による選抜という一点に比重のかかった従前の法曹養成システムを改め、法科大学院を「法曹養成のための中核的な教育機関」として新たに設置して大学院段階で本格的な法曹養成教育を行うという画期的なものである。


法科大学院における教育は少人数クラスの双方向的な密度の高い授業が基本となるため、これにふさわしい数の教授等を確保する必要があることからその経費が高額化することは不可避であり、現時点で法科大学院の設置を表明している私立大学の多数は年間200万円前後の授業料を想定している。さらに、原則3年間の法科大学院履修期間の生活費を加えると、法科大学院を修了するために要する学生1人あたりの負担は1000万円に及ぶと考えられる。


しかし、こうした多額の負担は富裕な階層の者しか法科大学院を履修できない事態を招きかねず、教育の機会均等の原則に反するばかりか、法曹に多様な社会階層・人材を迎え入れることを阻害する結果となる。法科大学院を名実ともに「法曹養成のための中核的な教育機関」とするためには、法曹志望者が経済的負担ゆえに法科大学院入学を断念することのなきよう財政的支援を充実させることが不可欠の課題である。


これに対し「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案」では、国の責務として、法曹養成のための施策実施に必要な財政上の措置をとるべきことが明記されているが、当連合会は、法科大学院が2004年(平成16年)4月に開校することに鑑み2003年(平成15年)夏までに、国が以下の財政的措置をはじめとする諸施策を具体化することを強く求めるものである。


  1. 法科大学院に対する財政支援を強化し、入学金・授業料の高額化を回避すること
  2. 日本育英会等の奨学金支給額の抜本的拡充に向けた財政支援、税制措置等
  3. 金融機関による学生本人への融資を促進する環境整備(政府保証制度の創設等
  4. 自治体や民間企業等の法科大学院に対する財政支援を促進する環境整備(地方財政法、地方財政再建促進特例措置法等の改正、税制上の措置等)

2002年(平成14年)11月7日


日本弁護士連合会
会長 本林 徹