判事の児童売春事件に対する会長談話

今回の東京地裁判事(東京高裁判事職務代行)による児童買春事件は、これまでの裁判官による不祥事のなかでも類例を見ない犯罪であり、われわれ司法に関する業務に携わる者として大きな衝撃を受けている。


次代を担う児童の未成熟の人格につけこみ、それを侵害したという行為の性格においても、また電子メールの匿名性を利用したという行為の態様においても、極めて悪質な犯罪であり、ましてそれが刑事司法の中枢にある者によって犯されたということで、司法に対する国民の信頼を大きく揺るがすものである。


当連合会は、裁判所において、先の福岡高裁判事による事件に続き、このような不祥事が起こったことについて重大な関心をいだかざるをえない。


このような事件の重大性に鑑みるとき、徹底的な事案の究明と再発防止が図られなければならず、また原因を個人的偶発的要因だけに帰することでは国民の信頼を回復することはできない。まして今回の事件では、弁護人の接見を通じて、「仕事からくるストレス」からこのような行為に出でたと伝えられている。


裁判所には、今回の事件の原因を究明する中で、裁判官一人ひとりが、市民的自由の享受を制限されることなく社会との自由な接点をもち、閉塞感をもつことなく、ゆとりをもって職務に専念できる環境条件を整える等の構造的な改革が求められている。


折しも、国民に身近で利用しやすく、信頼される司法の確立をめざして司法制度改革審議会の最終意見が出されようとしており、その中で、裁判官の給源・任用・人事のあり方など裁判官制度の改革、法曹養成制度の抜本的改革等について具体的提案が準備されている。


当連合会としては、裁判所が今回の事件に正面から向き合って改革を推進することを要望するとともに、我々自身、自重自戒しつつ、司法改革の推進に責任ある立場で国民に一層信頼される司法の構築を担うため全力を尽くすことを誓うものである。


2001年(平成13年)5月30日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡