福岡地検の捜査情報漏洩事件に対する会長声明

報道されているところによると、福岡地方検察庁の山下永寿次席検事(当時)が福岡高等裁判所の古川龍一判事に対し、同判事の妻に対する捜査情報を漏らしていたこと、福岡地裁が同判事の妻の令状請求関係書類のコピーを福岡高裁に提出し報告していたこと、が明らかになった。


この件について、法務省は、山下次席検事の行為について、個人の問題だけでなく検察全体のあり方の問題をはらんでいることは否定できない、と表明し、最高裁は、司法行政上の問題を理由に、コピーは不適切だが報告は許される、との見解を表明している。


本来、司法は「公正」でなければならない。検察と裁判所はそれぞれ独立した司法機関として、厳正・公正に職務を遂行しなければならないのは当然であるのに、今回の不祥事はこれに反し、身内意識から許されない取扱いをしたものであって、到底是認されるものではなく、誠に遺憾である。また、令状請求関係書類が担当部以外に持ち出されたこと自体問題があるうえ、判事本人ではなくその親族に関する情報についても裁判官の人事管理上必要なものとして高裁・最高裁に報告されていることは、人事権で裁判官をコントロールしようとするもので、裁判官の独立に抵触するおそれがある。


最高検察庁及び最高裁判所は、司法への信頼を根幹から揺るがせかねない今回の不祥事について、徹底的に事実を調査し真相を公表して、再発防止と関係者に対する厳正な措置をとって、司法への国民の信頼回復に努めなければならない。


当連合会は、司法を担っている一員として、最高検及び最高裁に対し、司法に対する信頼を回復させるために、早急に、真相の公表と厳正な措置をとることを求めるものである。


2001年(平成13年)3月2日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡