自衛隊法の一部を改正する法律案に関する会長談話

  1. 政府は10月5日、テロ対策特別措置法案(略称)とともに自衛隊法の一部を改正する法律案(以下「改正案」という。)を国会に提出した。
    改正案は、自衛隊の部隊等による警護出動の制度の新設などに加え、第96条2項の新設により、防衛秘密保護規定を導入しようとするものである。
  2. しかし、改正案には、次のような特徴といくつかの重要な問題点がある。
    まず改正案は、1985年に国会に提出されたものの、廃案となった国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案(いわゆる国家秘密法案)とその重要な部分で重なり合う内容と特徴を有している。
    また、防衛秘密は防衛庁長官の専権によって指定されることとされており、かつ、その範囲は著しく包括的であり広範である。
    さらに、その処罰の対象者として民間人や報道関係者も含まれ、処罰範囲も「共謀」「教唆」「煽動」のほか「過失」もその対象となるなど、著しく拡大されている。
  3. 当連合会は、上記国家秘密法案に対し、1985年(昭和60年)10月19日の第28回人権擁護大会において、同法案に反対する決議を行い、さらにその後、同法案についての「修正案」が再提出される動きがあったことに対しても、1987年(昭和62年)5月30日の定期総会において、同趣旨の反対の決議を行った。今回提出された改正案も、これらと同様に国民の知る権利、言論・報道・出版の自由に対する重大な侵害のおそれを含むものであり、また、罪刑法定
  4. 以上の観点と経過にかんがみ、国会に対し、今回の自衛隊法の一部改正案の審議にあたっては、基本的人権尊重を基本原則とする日本国憲法の理念にてらし、慎重に審議されることを強く求めるものである。

2001年(平成13年)10月15日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡