国際人権(社会権)規約委員会の最終見解に当たっての声明

国際人権(社会権)規約委員会は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下社会権規約という)の実施状況に関する第2回日本政府報告書について2001年8月21日行なわれた審査を踏まえ、同年8月31日最終見解を発表した。同委員会の政府報告書審査は、社会権規約が批准国で実効的に実施されているかどうかを確認するため行なわれているものであり、わが国は同規約の批准国として、同規約の実施義務を負い、また委員会から勧告された点について改善すべき義務を負う。


上記見解は23項目の懸念を踏まえ31項目の勧告を行なっている。この勧告は第1に、社会権規約、特にその中核的部分に関する政府の義務は法的義務であり、直接適用可能性を有すると指摘し、この点に関する日本政府の見解を見なおし、立法、行政及び司法の過程において同規約の規定が必ず考慮されるシステムの導入を勧奨している。さらに、社会権規約についての裁判官、検察官及び弁護士に対する教育を実施し、またウィーン宣言及びその行動計画に基づき、日本においても国内行動計画を作成するよう求めている。


第2に、同規約2条2項に定める差別の禁止は例外のない絶対的な原則であると指摘し、差別禁止法制の強化を求めている。ことに障害のある人に関する差別条項を廃止し、あらゆる差別を禁止する法律を制定することを勧告した。 第3に、パリ原則及び同委員会の一般的見解に従い、社会権をも対象とした国内人権機関の創設を求めている。


そのほか、女性、被差別部落出身者、アイヌなど国内少数者、在日外国人、婚外子などに対する差別、未批准ILO条約の批准、公務員争議権、ホームレスの人々、震災被災者、ドメスティックバイオレンス、慰安婦など多くの問題について勧告がなされている。


当連合会は、今回の同委員会の審査とその最終見解において、委員会が指摘した諸問題を日本政府が誠意をもって解決し社会権規約の実施に向けて努力する事を強く求める。同時に当連合会自身、日本政府との建設的対話を行ない、他のNGOと協力しながら、司法の場を含めて社会権規約のより実効的な実施に向けて全力をあげて努力することを表明するものである。


2001年(平成13年)9月6日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡