民事訴訟法の一部を改正する法律(公文書提出命令)の成立にあたっての会長声明

本日、民事訴訟法の一部を改正する法律が成立した。


公文書の提出命令に関する規定は、5年前の民事訴訟法の全面改正において導入されるはずであったが、法案が余りに官民格差のはなはだしいものであったため、薬害エイズ裁判やもんじゅの事故隠しなどが相次いだこととあいまって、世論の批判を浴び、国会から再検討を求められたものである。私文書の提出命令に関する規定はすでに施行され、活用されているなかで、今度、ようやく「官民格差」が是正されることになったことは、適正な司法を実現する上で、大いに歓迎すべきことである。これによって、民事訴訟において、公文書を訴訟の証拠として利用する道が開かれ、豊富な証拠に基づく適正な裁判に、より一層近付くことができることが期待される。


しかし、新たな問題点として、5年前の改正案にはなかった刑事記録等の一律除外規定が、報道機関や当連合会などの反対にもかかわらず、今回の改正に盛り込まれたことは、公文書提出命令規定の大きな部分が除外されることになるものであり、被害回復を求める損害賠償請求訴訟や住民訴訟、株主代表訴訟等々、刑事記録がきわめて重要な証拠となる裁判においてこれが利用できなくなることとなるのであって、この点はきわめて遺憾である。


もっともこの点について、国会では、報道機関や当連合会の意見に配慮され、附則において、運用の状況などを勘案して3年後に見直しがなされることが確認され、衆・参両院の附帯決議でも検討の方向性が示され、刑事記録等の一律除外規定をそのまま固定化させない可能性が残された。


今後は、日々多くの民事訴訟を担当している弁護士が、今回実現した公文書提出命令規定をはじめ、証拠収集手続規定を積極的に活用して、適正な裁判を実現して国民の付託に応えられるよう力を尽くすとともに、その実績をもとに、引き続き刑事記録等の一律除外規定の修正など、民事訴訟制度の改善・見直しを求めていく所存である。


2001年(平成13年)6月27日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡