会長コメント-民主党「市民が主役の司法へ」の公表を受けて

本日、民主党・司法ネクスト大臣より、「市民が主役の司法へ -新・民主主義確立の時代の司法改革-」と題する報告書が公表された。


この報告書は、司法改革の方向性について、「市民が主役の司法」を掲げ、その原理を「民主主義」に求めている。そして具体的には、「身近で充実した司法へ」「官僚司法から市民の司法へ」「市民が参加する市民の司法へ」と、民主主義の下での司法のあり方、その改革の方向性を明示している。


当連合会は、民主党のこの基本姿勢を、当連合会が推進してきた司法改革の方向性と概ね一致するものとして高く評価するとともに、その政策実現に向けた活動がなされることを強く期待するものである。


特に、当連合会が最重要課題として掲げている法曹一元について、「判事補の新規採用は2005年から廃止する」とし、「2045年ころには全ての裁判官が法曹一元制度により選任された裁判官となる」等と、具体的スケジュールを定め、現実的課題としていることの意義は極めて大きい。


また、陪審制についても、その導入(復活)を宣言し、具体的提案がなされている。


まず「当面は刑事重罪事件に限定してスタートさせる」とし、「施設整備上の困難を理由にその実現を遅らせ」ないため、「関係法令の改正により、裁判所管轄地域内の他の公的施設を活用する」などその早期導入に向けた制度的工夫が提言されている。


また、他の問題についても、行政訴訟手続の改革、家庭裁判所の機能充実、法律扶助制度の充実、公費による被疑者弁護の導入、最高裁判所のジェンダーバランスの実現など、市民の立場に立った改革が積極的に提起され、全体として高く評価しうるものである。もとより、全ての点において当連合会の提案と一致するものではないが、それらの点についても、基本的な姿勢は共通しており、相互理解をすすめることは困難ではないと考えるものである。


当連合会は、21世紀にふさわしい抜本的な司法改革の実現を目指し、司法制度全般にわたる改革を提言し、弁護士制度をはじめとする改革に努力しているところであるが、国民各層から、民主党に続く、「市民の司法」「法曹一元」「陪審制度」の実現に向けた意見が活発に表明されることを期待する。当連合会はこれらの課題の実現に向けて、国民各層と共に一層の取り組みを行っていく所存である。


2000年(平成12年)7月12日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡