第2次内田国賠最高裁判決に対する会長声明

最高裁第三小法廷は、本年6月13日、接見妨害にかかる内田国賠(第2次)事件について、請求を棄却した東京高裁判決を破棄し、内田雅敏弁護士及び被疑者本人に損害賠償を命じた一審の東京地裁判決を支持する原告再逆転勝訴の判決を、裁判官4名全員一致で言い渡した。


本件は、デモに参加し東京都公安条例違反の容疑で逮捕された被疑者に逮捕直後に接見しようとした原告弁護士が、警察署玄関で警備にあたる警察官らに当該被疑者からの連絡により接見に赴いたことを告げたにもかかわらず、署内に入ることを実力で阻止され留置係に行くことを妨げられた上、捜査主任官より取調べ中を理由として接見を妨害された事案である。今回の判決は、最高裁に係属していた7件の接見妨害国賠訴訟において、原告弁護士側の上告を容れて逆転勝訴させた初めての事例である。


本判決は、まず、被疑者の逮捕直後の初回接見は「直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留又は拘禁されないとする憲法上の保障の出発点を成すものであるから、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である」と指摘した。そして、本件の場合、取調べを中断するなどして接見の時間を確保することができたとして、即時又は近接した時点での接見を拒否した警察官の措置を「被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限」する違法な行為であったと判示した。


この判断は至極当然のものではあるが、最高裁としては初めての判断であり、高く評価できる。


当連合会は、これまで憲法上のあるべき接見交通権の確立を目指し全力を挙げてきた。また、被疑者・被告人の弁護を受ける権利を確立するため、当番弁護士制度の実践をはじめとして、あらゆる努力を傾注してきた。


当番弁護士の接見のほとんどは、まさに「初回接見」である。その重要性が最高裁判決によって宣明されたことは、誠に意義深いものである。しかし、かねてより当連合会が指摘しているように、「初回接見」に限らず、接見は直ちに認められるべきであって、接見交通権は憲法上の権利として尊重されるべきである。


当連合会は、今後とも、さらなる当番弁護士の充実・発展及び完全な接見交通権を含む刑事弁護の権利の確立のために、国際的な面を含むあらゆる活動をねばり強く推進していく決意である。


2000年(平成12年)7月1日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡