平成12年司法試験最終合格者発表に関する会長声明

本日、平成12年度司法試験の最終合格者が発表された。994名の新しい法曹の仲間に入ろうとする人の誕生を心から歓迎し、今後の司法修習を通じて法律実務家として大きく成長されることを期待する。


ところで、短期受験者を優遇するいわゆる丙案が実施されてから5年目を迎え、今年度論文式試験においても、成績順位が1400番台後半の短期受験者が合格する一方、700番台末の受験者が不合格となった。丙案のもつ不平等性は依然として深刻であり、拡大傾向にある。


また、今回の試験の成績に基づき丙案を実施せずに成績順に合否を判定したとすると、受験期間3年以内の合格者割合は37.6%(381名)、同5年以内割合は59.0%(597 名)となる。この数値は、平成2年の法曹三者の基本合意における検証基準の数値(3年以内30%または5年以内60%)を3年以内では上回り,5年以内ではほぼ達しており、こうした結果は、平成8年度試験以降5年間にわたり安定的に継続している。因みに5年以内合格者は平成4年度までの合格者総数(約600名)に匹敵する。


司法制度改革審議会では、2000年10月31日の審議会において、法科大学院(仮称)を中核とした法曹養成制度を新たに整備することで意見が一致した。21世紀に向け、公平性・開放性・多様性を基本理念とした新たな抜本的な制度改革としての法曹養成制度改革が行われるにあたり、不平等性を帯有する丙案の存在はこの制度改革の方向と相入れない。加えて、短期受験者を優遇する丙案が存続することは、法曹を目指す者に対し、法科大学院(仮称)に進学すべきか、現行司法試験制度存続の間は丙案を利用して法曹資格取得を目指すべきかの選択を強いる等のいたずらな混乱を招く危険があり、新たな法曹養成制度の健全な発展の観点からも問題があるといわざるをえない。


当連合会は、一貫して丙案反対を主張してきた経緯、かつ、21世紀の「市民の司法」を担うにふさわしい法曹の養成を眼目とする新たな法曹養成制度の意義を踏まえ、現在、法曹三者で進められている「法曹選抜及び養成の在り方に関する検討会」での協議をはじめ、あらゆる機会を通じて、丙案廃止のために努力を尽くす所存である。


2000年(平成12年)11月10日


日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡