中国の核実験実施に抗議し続行実験の中止を求める声明

核兵器の使用・実験は地球環境を破壊し、人間の生命に取り返しのつかない被害をもたらす最大の人権侵害である。われわれは、核兵器の使用・実験の脅威から解放され、人間としての尊厳を保って、平和の裡に生存する権利がある。


中国政府は6月8日、地下核実験を実施した。同時に、包括的核実験禁止条約(CTBT)の調印が見込まれる9月以降は凍結するとしながら、それまでにもう1回、核実験を行うと発表している。中国の核実験は昨年8月17日以来で既に通算44回目、1995年に中国が核拡散条約に加盟してからでも3回目に及んでいる。


今年1月にフランスが世界中から高まった核実験反対の声の前に当初計画の縮小を余儀なくされた後、唯一残る核実験続行国である中国の姿勢が注目されていたところである。それだけに核実験凍結の声明と同時とはいえ、核廃絶を願う国際世論に背を向けた中国の核実験の続行は決して許されない。この核実験がCTBTの交渉に与える悪影響が懸念される。地下核実験であっても、地上への放射性物質の放出が避けられないことはアメリカ・旧ソビエトの核実験場周辺の放射性物質漏れの事故と環境汚染と住民の間の深刻な健康被害の事実が証明しているところである。


日弁連は、昨年9月にフランスの核実験に対してもその即時中止を求める声明を発したところであるが、今回の中国の核実験に対しても、厳重に抗議し、その即時中止を求めるとともに、中国、フランスをはじめとする全ての核保有国が核廃絶に向けて真剣な努力を払うよう求めるものである。


1996年(平成8年)6月10日


日本弁護士連合会
会長 鬼追明夫