法定相続分の非摘出子差別合憲判決に関する声明

民法900条4号但書前段は、非嫡出子の法定相続分につき、嫡出子の2分の1と規定している。


本年7月6日、最高裁判所大法廷多数意見は、この民法の規定につき、法律婚の保護と非嫡出子の保護の調整を図ったものであり、合理的理由のない差別とは言えず、憲法14条1項に違反しないと判断した。


しかしながら、最高裁判所の前記判断は、非嫡出子の差別撤廃に向けての近年の国内外の潮流に完全に逆行するものであって、きわめて不当である。


国内では、1994年7月に法務省民事局参事官室から公表された「民法改正要綱試案」において、嫡出子と非嫡出子の相続分の平等化案が盛り込まれている。裁判実務においても、1993年6月の東京高等裁判所における違憲決定を皮切りに、1994年11月の東京高等裁判所の二度目の違憲判決、児童扶養手当の差別的取り扱いに関する1994年9月の奈良地方裁判所の違憲判決、住民票続柄の差別的記載に関する1995年3月の東京高等裁判所の違憲判決、1995年4月の横浜家庭裁判所川崎支部における違憲審判など、非嫡出子差別については違憲の判断がむしろ定着する方向にあった。


諸外国においても、昨今嫡出子と非嫡出子の地位の平等化を図る立法が相次ぎ、いわゆる先進諸国で差別を残しているのは日本とフランスのみとなっている。


国際人権(自由権)規約違反を審議する国連の規約人権委員会は、1993年11月、日本の民法の相続分差別は、同規約26条に抵触するとの異例の勧告を出している。


当連合会は、1993年7月12日に非嫡出子に対する差別廃止を求める会長声明を公表し、さらに1994年2月に「非嫡出子に対する差別廃止の法改正を求める意見書」を発表して、非嫡出子に対するすみやかな差別廃止の法改正を求めてきた。


民法の相続分差別は、非嫡出子を親の法律婚の有無という、本人には全く責任のない事実によって差別するもので、憲法14条、国際人権(自由権)規約24条、26条、子どもの権利条約2条等に明らかに違反するものである。


当連合会は、今回の最高裁判所の決定によって、民法改正作業が後退することのないよう、関係機関に強く求めるとともに、その他の残された非嫡出子に対する差別についても、すみやかに法改正されるよう関係諸機関に要請する。


1995年(平成7年)7月7日


日本弁護士連合会
会長 土屋公献