「脳死及び臓器移植に関する各党協議会」による「臓器移植法(仮称)」要綱案の作成にあたって

「脳死及び臓器移植に関する各党協議会」(座長・森井忠良衆議院議員)は、「臓器移植法(仮称)」の立法を目指し、前国会以来、検討を重ねてこられたところ、いよいよ、本日(11月25日)各会派代表による作業部会で、その要綱原案をとりまとめ、明11月26日の協議会で要綱案を作成すると報道されている。


その内容については、「脳死が人の死であることを明記せず」とされているものの、「死体(脳死体を含む)から臓器を摘出できる」とか「死亡時刻は第1回または第2回の判定時とする」などの表現が採用されるとすれば、「脳死」を人の死とすることを前提とした立法であると言わざるをえない。


日弁連は、これまで公表してきた意見書(平成5年3月19日)及び会長声明(平成5年6月2日)において、「脳死」を死とする新しい社会的合意はいまだ成立していないとの認識のもとに、現段階での脳死状態からの臓器移植は、(1)最も厳格な定義、判定基準、方法によって「脳死」が判定され、(2)臓器を贈るというドナー本人の明確かつ自発的な意思が確認される書面がある場合に限る等の基本原則が貫かれなければならないと強調してきた。


われわれは、いま、重ねて、各党協議会が拙速に陥ることなく、これらの基本原則のうえに、生命倫理の諸問題検討の原点に立ちかえり、広く社会的合意を形成しつつ検討を深められるよう、強く要望する。


1993年(平成5年)11月25日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎