製造物責任法の制定に際して

当連合会は、欠陥製品被害の予防と救済のためには製造物責任法が必要不可欠であると考え、1991年3月「製造物責任法要綱」を提言するなど法制化にむけて、関係各方面に働きかけてきた。


国民生活審議会は、昨年10月19日消費者政策部会報告で「製造物責任制度を中心とした総合的な消費者被害防止、救済の在り方について更なる検討を行い、おおむね1年以内にその結果を取りまとめることが必要である。」とし、関係各省庁に検討を求めた。


しかし、産業構造審議会、中央薬事審議会などは、製造物責任法の法制化は是とするものの、欠陥概念を極めて限定的にとらえ、当該製品は損害に含めず、欠陥及び欠陥と因果関係の推定規定は採用せず、裁判所の事実推定則の活用に委ね、技術レベルでの開発危険の抗弁を認めるべきであるとしている。


しかしながら欠陥製品被害救済の裁判にたずさわる弁護士として、今日の訴訟の実情に照らせば、かかる内容の製造物責任法はEC指令にはるかに及ばないものであり、このような法によって被害の予防・救済が進展するとは到底考えられない。真に被害の予防及び救済に資する製造物責任法の制定は、今日わが国の当面する課題である生産者中心から消費者・生活者の利益擁護への政策転換の要である。


そこで全国の弁護士会単位会の決議・会長声明および各弁護士の多数の署名を受け、次の内容をもった製造物責任法の早期制定を強く求めるものである。


  1. 欠陥概念を欧米におけると同等のものとすること。
  2. 欠陥および因果関係の推定、並びに欠陥の発生時期の推定の規定を設けること。
  3. 開発危険の抗弁を認めないこと。
  4. 製品の安全性に関する情報を所持する者に、その開示を義務づけること。
  5. 広く欠陥製品による被害救済のための法とし、損害の種類や額および責任期間を制限しないこと。
  6. 悪質な製造業者に相当な付加金を課す。

1993年(平成5年)11月17日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎