外国人登録法一部改正案の国会上程にあたって

政府は、本年2月7日外国人登録法一部改正案を今国会に上程した。この改正案は、登録法上の外国人の中で同法所定の特別の資格を有する「永住者」と「特別永住者」についてのみ指紋押捺制度を廃止し、この代替措置として署名と家族事項の登録を導入するとともに、外国人登録証明書常時携帯制度については、従来のままとするものである。


同法の指紋押捺制度は、わが国に1年以上滞在する16歳以上の全ての外国人に一律にその指紋を登録させるもので、日本人についてはこのような制度がないところから、外国人を差別するもの、あるいは外国人を犯罪者視するものなどの強い批判がなされてきた。


また、登録証明書常時携帯制度は、外国人にまさしく「常時」登録証明書を携帯させ、その違反には金20万円以下の罰金に処するというもので、わが国に居住する外国人の日常生活に過大な負担を課するもの、外国人の差別取扱いであるなどの批判がなされてきた。


当連合会は、外国人に対する指紋押捺制度及び登録証明書常時携帯制度については、それぞれ憲法14条の法の下の平等規定、国籍による「差別」を禁止する国際人権規約B規約2条、26条に違反している疑いが強いとして、その廃止を求めてきた。近年、国際間の人、資本及び物の移動が増加し、一層多くの外国人がわが国に滞在している。このような国際化が進む中で、わが国に滞在する外国人がその国籍故に差別されぬよう保障することは、わが国が遵守するべき国際法上の義務である。


当連合会は、今般の外国人登録法一部改正案の審議に際して、「永住者」、「特別永住者」に対してのみならず、その他の在日外国人に対しても一律に要求される指紋押捺の制度を全廃し、あわせて全ての外国人に一律に外国人登録証明書の常時携帯を要求する制度をも廃止するよう、再度求めるものである。


1992年(平成4年)4月14日


日本弁護士連合会
会長 阿部三郎