国連総会の「精神病者の保護及び精神保健ケアーの改善」に関する決議について

この程、国連総会は「精神病者の保護及び精神保健ケアーの改善」に関する決議を採択した。


この決議には、25原則に及ぶ具体的な人権基準を定めた附属文書が付されている。これは1978年以来十数年に渡り、国連差別防止小委員会、同人権委員会等において、WHOを含む多くの国際機関、ICJを含む多くの国際NGO等の協力、参加を得て検討の上完成された、貴重な成果である。


我が日本弁護士連合会も、精神障害者、特に精神病院に強制入院されられた精神障害者の人権保障について多大の関心を払い、又強制入院制度や患者の治療を受ける権利等につき、度々意見書を発表し、1987年制定された精神保健法に関しては具体的な立法提言を行った。


現在政府関係当局は、1993年を目途に上記精神保健法の改正案を準備中と伝えられる。


われわれは、今般国連総会において採択された上記決議を鋭意検討し、我国の精神障害者の置かれている地位を国際的人権基準に適合させるよう、具体的な提言を行う所存であるが、政府に対し、上記国連決議を尊重し、その提言する諸規定を来るべき精神保健法の改正案に取り入れ、1984年発覚した宇都宮病院事件に象徴されるような患者の悲惨な人権侵害を2度と発生させぬよう、早急に充全なる法制度を整備し、それを実施することを強く要望する。


1991年(平成3年)12月25日


日本弁護士連合会
会長 中坊公平