「刑事訴訟法一部改正案要綱に対する意見書」の発表に当って(談話)

日本弁護士連合会は、かねてから、「要綱」に対し、不必要な制度であるばかりか、刑事裁判の実質を失わせ、裁判の公正に関する憲法上の諸原則をふみにじり、刑事訴訟制度の根幹を破壊するものであると、厳しく批判してきた。本日、その意見の大綱を発表する。


日本弁護士連合会は、この「意見書」によって、問題の深刻な重大性を強く訴え、あくまで、ひろく国民とともに、「要綱」の実現を阻止するために全力をつくす決意である。


なお、日本弁護士連合会は、次の三点についても、早急に検討を進める。


  1. 具体的な刑事訴訟事件において裁判の進行に重大な支障をきたす事態が生じている場合についていえば、無理な期日指定のおしつけなど、裁判所側に主たる原因のある事例もあるが、すでに関係弁護士会の地道な成果が示しているように、弁護士会がその解決のため、これに関与することが必要な場合もあると考えられる。日本弁護士連合会は、・訴訟関係者相互の努力と法曹三者の真剣な協議によってねばり強く解決に当たることが最も適切・(意見書)であるという基本的立場に立ちつつ、必要に応じて裁判所との間に、そのための協議の機会をつくるなど、法曹三者内で具体的な方策をまとめるよう提案し、努力していく。
  2. 弁護人をつけなければならない刑事訴訟事件において、やむをえない事情から弁護人不在の空白状態が生じた場合には、関係弁護士会の実績に立脚しながら、適切な解決をはかるために、弁護士会として国選弁護人の推せんなどに関し組織的にこれに対処する方策をまとめていく。
  3. 刑事訴訟における審理の実態をみると、裁判所・検察官の不当な措置を問題とすべき事例も少くなく、そのような場合には、それを鋭く批判し、正していくことが重要である。同時に弁護活動に関する弁護士会内の相互批判を強め、正すべきものを正しつつ、弁護士自治の内容をたえず高めていくことも必要である。そのことが、弁護人の弁護活動に対する不当な介入を排除していくうえで、何よりの基礎になるものと信ずる。

要するに、日本弁護士連合会は、いかなる場合にも、被告人の正当な利益を適確にまもることにより、ひろく国民の支持を得ることのできるような弁護活動のあり方を求めて、不断に努力すべきものであると考えている。


1978年(昭和53年)1月10日


日本弁護士連合会
会長 宮田光秀


昭53・1・10記者発表