刑事訴訟法(いわゆる弁抜き法案)の一部改正に着手したことに対する声明

法務省は、ハイジャック防止対策の一つとして、いわゆる過激派裁判の迅速を図るためと称し弁護人なしで刑事裁判手続を進めることができるよう刑事訴訟法の一部改正を企図して策定中とのことである。


ハイジャックを防止し根絶すべきことは、日本弁護士連合会としても心から希求するところである。


しかし、ハイジャックの防止、根絶と刑事裁判手続の迅速化とは本来何のかかわりあいもないことである。いうまでもなく、日本国憲法は、被告人は如何なる場合でも資格ある弁護人の弁護をうけることができる旨を規定し、被告人の基本的人権と公正な裁判の保障とを確保している。今回伝えられるような弁護人なしで刑事裁判手続を進める措置を許すことは、理由の如何を問わず、右の憲法の要請に真向から反する。


当会は、公正な司法の運営につき大きな責任を有する法務省が、右のような日本国憲法に反し、刑事裁判制度の根底をゆるがすが如き刑事訴訟法の改正に着手することのないよう強く要望する。


昭52・11・9記者発表