刑事訴訟法(いわゆる弁抜き法案)の一部改正案が刑事法部会で可決されたことに対する談話

法制審議会刑事法部会は、いわゆる「弁護人ぬき裁判」を可能とする刑事訴訟法一部改正案の要綱を原案どおり可決して総会に報告することとなった。日本弁護士連合会はこの改正案要綱が弁護人依頼権に重大な制約を加えるという点で、憲法上疑義があり、かつ現在の刑事裁判の実態からしてもそのような危険な立法の必要がないことを強く訴えてきた。


審議が刑事法部会に移された時、われわれは、刑事裁判の実情や問題点、弁護士会をも含めて法曹の対処方法を部会の専門家において充分検討し、法改正の必要性の審議から入ることを期待していた。日弁連側委員は、この法改正がハイジャック防止と無関係だという指摘に止まらず、現在の刑事裁判のうち審理遅延と称されている事案について詳細な事実調査結果を部会に提示して法改正の不必要性、不当性を理解してもらおうとしたのである。しかるに刑事法部会における審議はわずか2回にすぎず、そこでは法改正の必要性に関する討議は殆ど顧慮されず、違憲の疑いも晴れぬままに立法技術のみの検討に止って本日の報告となったのはまことに遺憾である。


われわれは、この危険きわまる法改正とその背景を国民に訴えてその理解のもとに断固、法改正を阻止する決意である。


昭52・12・19記者発表