2021年度会務執行方針

はじめに

人、もの、資本、情報が私たちの生きる国家の国境線を越えて超高速で行き来するというグローバル資本主義が大きな転換期を迎えています。新自由主義による市場原理主義によって国境を越えて経済活動が展開される中で、国民国家の在り方が揺らぎ、その役割を大きく問われていましたが、今回のコロナ禍は、私たちが立ち止まって考える機会を与えてくれました。後日、歴史的な転換期と言われる可能性がある時期に私たちは先の見えない不安感を持ちながらも新型コロナウイルス感染症の感染拡大という現実に真正面から向き合い、これをどう克服し、次の時代を迎えるかを真剣に考えています。まさしく私たちが本当に大切にしなければならないことを確認し、今実行しなければならないことを自覚し、実践する過程になっています。


私たちは、2020年度、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対し、迅速かつ適切に対応するため、COVID―19対策本部を立ち上げ、この本部を中心として日弁連は他の本部、センター、委員会、ワーキンググループや8つの弁護士会連合会、52の弁護士会等の力を結集しながら、様々な活動を行ってきました。その概要につきましては、2021年に2月に発行されました「COVID―19と人権に関する日弁連の取組―中間報告書-」にまとめられたとおりですが、実に幅広い分野についてこれまで蓄積してきた調査、研究、議論の成果を十分に活かしながら日弁連としての意見、見解、立場等を明らかにするとともに、今後何をすべきかについても具体的に言及し、関係機関への働きかけを行ってきたことが理解できる内容となっています。


2020年度は、上記のような活動を展開する一方、同時並行してコロナ禍以外の諸課題についても積極的に活動を展開してきましたが、その際、念頭に置いたキーワードは次のとおりです。


すなわち、法の支配の確立、法治主義の徹底、立憲主義の堅持を含む憲法の基本原理の尊重、司法基盤の整備・拡充、弁護士自治の堅持、格差社会の是正など、私たちが従来から重く受け止めて使用してきた言葉を具体的な諸課題の中で実現すべく、活動を行ってきました。


検察庁法の改正問題、少年法の改正問題、日本学術会議の委員の任命問題、感染症法やインフルエンザ特措法等の改正問題と新型コロナウイルス感染症の予防接種に関する問題に対する対応等において日弁連の意見や提言の取りまとめを行い、関係機関への働きかけができたことは極めて有意義なことであったと思います。


コロナ禍への対応とそれ以外の諸活動への対応については以上のとおりですが、公表した宣言は1本、意見書・提言書は52本、会長声明・談話は67本とかなり多数に上るものとなりました。


2021年度もまた2020年度と同様に以下のとおり様々なキーワードを念頭に置きながら活動を展開したいと思います。


1 全ての地域において、また全ての課題への対応に当たり、法の支配を確立し、法治主義を徹底し、憲法の基本原理である立憲主義と国民主権、基本的人権の尊重、平和主義を堅持する。


2 主権国家として国民が自ら決定あるいは判断すべき事項の全てについて、適正な手続に基づいて国民の意思を十分反映した決定あるいは判断がなされるよう、法制度の見直しを求める。


3 立法府たる国会が国権の最高機関であることを再確認し、その役割を十全に果たせるよう活動して国民主権を再構築する。


4 権力の均衡により国家権力を適正に行使するための三権分立を再確立する。特に法の支配を社会の隅々に浸透させる役割を担う司法の役割を強化する。


5 法曹養成・法曹人口問題、民事訴訟のIT化を含む民事司法改革、取調べの可視化や取調べへの弁護人立会権、刑事手続のIT化を含む刑事司法改革、2021年度に開始された理事クオータ制を含む男女共同参画社会の実現などの司法基盤について整備・拡充する。


6 社会内の様々な場面で大きな「ひずみ」を生じさせる格差社会を迅速かつ適正に是正する。


7 弁護士のより高度な専門性、より幅の広い公共性、より強い独立性・主体性を確立し、弁護士の使命である基本的人権の擁護と社会正義の実現をできるようにするための支援体制を確立する。


8 不祥事の予防を含む対策の強化や会員による会務への積極的な参加により弁護士自治を堅持する。


9 日弁連の活動をより活性化・可視化し、弁護士業務の更なる拡大を図り、弁護士会の活動との連携を強化する。


10 コロナ禍を含む災害への支援は、一人ひとりの置かれた立場や被災状況、内容等において異なるものであり、オーダーメイドのものでなければならず、最終的には人間の尊厳を回復する過程であること(人間の復興であること)を自覚し、活動を行う。


私たちは、2020年度の臨時総会において承認された総会、理事会、法定委員会の開催方法等に関する会則・会規の改正を、必要に応じて、2021年度に開催される総会、理事会、法定委員会において活かしながら、より一層活発で内容のある活動を展開していかなければならないと思っています。また、重要諸課題を含む様々な課題について、可能な限り国内最大の人権擁護団体である日弁連に相応しい活動を行いたいと思います。


第1 コロナ禍の中での課題への対応

1 各種会議等の円滑な開催と適切な議事進行

(1)総会、理事会及び法定委員会

2020年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、日弁連の基幹会議や法定委員会もその影響を強く受けましたが、このような不測の事態にも日弁連の意思決定を適時適切に行い、法定委員会を安定的に開催できるよう2021年3月の臨時総会において、災害等の事由による定期総会の開催時期・開催地の変更、弁護士会及び代理人の書面による議決権行使、通信システムを利用した理事会、法定委員会の出席等所要の改正を実施しました。2021年度も感染症の状況は予断を許しませんが、充実した議事の実現とともに、会務の安定的な運用を目指してまいります。


(2)各委員会

多くの委員会、ワーキンググループ等では、コロナ禍でも会務執行の継続性を確保するため、ウェブ会議システムを活用した委員会活動が行われ、2021年1月からは、本格運用を開始しました。会員からは、会務活動に取り組みやすくなったとの評価もあり、2021年度も安定した運用ができるよう引き続き注力していきます。


2 具体的な施策等

(1)COVID-19対策本部の活動

2020年4月、会長、副会長全員及び全国の弁護士会会長を兼務する理事全員等を構成員とする「COVID-19対策本部」を設置しました。この対策本部の設置期限を延長し、2021年度もこの対策本部を中心として、関連委員会及び全国の弁護士会と連携・協力しながら、市民向け・事業者向けの各種施策を実施します。また、事務所経営やコロナ関連業務に役立つ情報提供を中心とした会員向け施策に取り組みます。


(2)市民・事業者向け施策

新型コロナウイルス感染症による市民生活への影響は極めて広範囲にわたっており、様々な場面で支援を必要とする人が増えています。また、企業活動への影響も甚大であり、中小企業の経営に従事する方々は苦戦を強いられ、中には倒産や廃業に追い込まれる方々も少なからず出てきています。感染者やその周囲の関係者、医療従事者などに向けられた偏見・差別も大きな問題となっています。


2020年4月から7月まで全国統一ダイヤルを使用して実施した電話相談では、労働問題や消費者問題、公的支援制度、借入金問題、賃料問題などの相談が多く寄せられました。再度の緊急事態宣言発出後の2021年2月から一部地域で実施している無料法律相談や、常設の「ひまわりほっとダイヤル」に寄せられた相談の傾向なども分析しつつ、引き続き市民・事業者の法的ニーズに応える施策を立案・実行します。


新型コロナウイルス感染症関係にも適用が拡大された自然災害債務整理ガイドラインの更なる利用促進のための支援態勢の整備や、オンラインを活用した法的サービスの提供なども推進します。


(3)弁護士会・会員向け施策

感染拡大状況下においても法律相談機能を維持するための感染防止対策に関する支出や、無料相談等の担当者の日当支払などをはじめとして、各地の弁護士会に発生している有形・無形の負担に対して、2021年度も引き続き、日弁連から必要な補助を行います。


また、市民向け・事業者向け法律相談に役立つコンテンツを状況に応じて作成し、eラーニング等で会員に提供するほか、ウィズコロナ、アフターコロナの事務所経営に役立つコンテンツも引き続き提供して会員の業務を支援します。


(4)対外的な意見表明を含む諸活動

2020年度中に、新型コロナウイルス感染症に関連して発出した会長声明・談話は22本に上ります。また、2度の延期を経て2020年9月4日に開催された定期総会において、「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う法的課題や人権問題に積極的に取り組む宣言」を採択し、今後も長く続くであろうコロナ関連の様々な問題に日弁連を挙げて取り組むことを内外に宣言しました。2021年度も引き続き対外的な意見表明を含む活動を積極的に推進し、人権擁護団体としてのプレゼンスを示します。


第2 平和と人権

1 憲法の基本理念・原理を守る

(1) 憲法改正問題等への取組

日本国憲法は、第二次世界大戦の反省を踏まえ、立憲主義の理念の下、基本的人権の保障・国民主権・平和主義を基本原理として採用し、戦後の我が国の発展に大きく寄与し、国民の自由と平和を保障するものとなりました。


私たちは、法律の専門家団体として、立憲主義を堅持し、自由と平和を守り抜かなければなりません。


政権内には、自衛隊の合憲性を明確にするために憲法第9条に自衛隊を明記する、災害対策などを理由に緊急事態条項を新設するなどの憲法改正の動きもあります。しかし、自衛隊の明記は立憲主義及び恒久平和主義に反する事態を招くおそれがあり、日本の国の在り方の基本を左右することにもなりかねません。緊急事態条項につきましても、立法事実そのものが乏しいばかりでなく、政権による権限濫用を招く危険性をはらんでいます。これらの問題については、国民が熟慮できる機会が保障されなければなりません。


また、憲法改正の手続法においては、最低投票率の定めがなく少数の賛成による憲法改正がなされる懸念があること、資金力のある者による大量の有料広告放送により国民の慎重な判断が阻害されかねないことといった問題もあります。


私たちは、憲法改正の議論を行うに当たっては、立憲主義の大切さを国民や政府に丁寧に説明し、引き続き問題の所在を指摘していきます。


この他にも、憲法の基本原理に関わる諸課題(基地問題、日米地位協定の抜本的な改定、核兵器の廃絶等)について、調査及び研究を深めるとともに取組を進めていきます。


(2) 特定秘密保護法の抜本的見直しと運用状況の監視

特定秘密保護法については、国民の知る権利に重大な制約を加えるおそれがあることから、引き続き、その廃止を含めた抜本的な見直しに向けた取組を進めます。あわせて、同法が濫用的に適用されないよう、運用状況を監視します。


(3) いわゆる共謀罪法の廃止

いわゆる共謀罪法は、市民の人権や自由を侵害するおそれが強いものであり、引き続き、その廃止へ向けた取組を行っていくとともに、本法律が恣意的に運用されることがないように厳しくその適用状況を注視し続けます。


2 人権擁護活動の充実

(1) 子どもの権利、少年法改正問題への取組

全国の児童相談所における弁護士の配置等を推進し、児童虐待防止のための取組を強めていきます。弁護士による学校や学校設置者(教育委員会等)への関わりについては、当連合会がスクールロイヤーと定義付けている活動、学校等の代理人として保護者対応を行う活動、その他第三者委員会、研修、授業等に関わる活動等様々なものがありますが、子どもの最善の利益の実現のため、学校現場における法務相談体制の拡充に向けた検討等を更に進めます。また、無戸籍の解消のための取組や子どもの手続代理人の制度の促進を継続し、新しい特別養子制度の安定した運用を図ります。


今次の少年法の改正に当たっては、適用年齢については引き下げられることなく維持されることとなりましたが、改正による課題も多く、解決に向けた取組を継続していきます。


(2) 高齢者・障がい者の権利

高齢者や障がい者が自分らしい生き方を選択できるような社会を実現するために、法律専門家として積極的に各種の制度構築と運用改善に取り組みます


特に、成年後見制度については、本人による意思決定を支援し、身上に配慮した運用がなされるように改善に尽力するとともに、中核機関の設置・運営を支援するなど利用促進のための運用改善を図ります。あわせて、弁護士成年後見人による不祥事の根絶に向けた一層の取組を継続するとともに、弁護士成年後見人信用保証制度の安定的な運用が行われることを目指します。


また、行政を含む福祉関係者との連携を構築し、より身近な「ホームロイヤー制度」の普及に努めます。


そして、精神保健の分野において、精神科病院入院者の権利擁護を実現し、地域移行の支援に向けた取組を強化します。


(3) 被災者支援

東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などにおける弁護士及び弁護士会による被災地支援活動を通じ、自然災害の発生時における弁護士の活動の有用性が広く知られるようになってきています。令和元年台風災害及び令和2年7月豪雨災害においても、自然災害債務整理ガイドラインによる生活再建や災害ADRの活用による紛争解決など、弁護士による被災者の支援に取り組みました。今後も発生するであろう災害に対してはこれまでの経験で得られたノウハウを活かした取組を継続していきます。


被災者支援にあっては、被災者一人ひとりに生じた多様な事情を踏まえた支援の在り方を計画し、実践する「災害ケースマネジメント」の観点に立脚することが有益であり、全国市長会との連携協定などを活用しながら、行政や福祉機関と連携した支援体制を確立することに努めます。


(4) 死刑制度廃止と刑罰制度改革の実現に向けた取組

死刑は国家が人の生命を奪う究極の人権侵害です。犯罪被害者・家族・遺族の方々の心情と置かれた実情に配慮しつつ、人の生命の尊さや誤判・冤罪の可能性などから、死刑制度が廃止されるべきであることを、引き続き社会に訴えていきます。


2016年10月の人権擁護大会宣言(福井宣言)で目指した2020年までに死刑制度を廃止するという目標は実現できませんでしたが、死刑廃止が国際社会の目指す方向であることに変わりはなく、死刑を廃止する国や州は更に増え続けています。我が国の提唱する「司法外交」を推進する上で死刑制度の存在が大きな障害となっており、死刑制度の存置は国益に資さないという観点からも、国に対して引き続き死刑制度の廃止を訴え続けていきます。


2019年10月の理事会で取りまとめた「死刑制度の廃止並びにこれに伴う代替刑の導入及び減刑手続制度の創設に関する基本方針」及びこれとともに提示した「減刑手続制度の内容に関する主な検討事項(案)」に沿って議論を更に深化させ、2018年12月に発足した超党派の議員連盟「日本の死刑制度の今後を考える議員の会」との連携も通じて、国会内や法務省内に「これからの刑罰制度」について検討する有識者会議や審議会などを設置するよう働きかけていきます。あわせて、その検討期間中は死刑の執行を停止するよう、必要な法的手続の整備を求めていきます。


(5) 外国人の権利

2018年の人権擁護大会及び2019年の定期総会における宣言に従 い、外国にルーツを持つ人々との共生社会の実現を目指します。具体的には、多文化共生総合相談窓口との連携による外国人住民に対する司法アクセスの拡充、特定技能等の在留資格による外国人労働者を受け入れる中小企業等の態勢支援などに関する取組を実施するとともに、引き続き外国人の人権救済申立事件を通じた救済に取り組みます。


また、出入国管理及び難民認定法改正案は、難民申請者に対する送還停止の効力の一部解除、退去命令に違反して退去しない者や監理措置における監理者の義務違反に対する刑事罰の創設などといった多くの問題点をはらんでおり、これらの見直しに向けて取組を行います。


(6) 犯罪被害者の権利

日弁連が日本司法支援センターに委託して実施している犯罪被害者法律 援助事業の国費化に向けた取組を一層強めます。また、全ての地方公共団体において犯罪被害者支援条例を制定するような働きかけを続けていきます。さらに、性犯罪・性暴力被害者のための病院拠点型ワンストップ支援センターが都道府県に最低1か所は設立されることを求めていきます。


(7) 消費者被害の防止・救済

消費者被害の問題は、近時ますます複雑化・広域化しています。情報の質量及び交渉力等の格差から構造的に弱い立場にある消費者の利益を守るため、被害防止・救済方策を進める必要があります。特に、我が国が直面している超高齢社会における高齢者の保護及び成年年齢の引下げが近付く中での若年者の保護の必要性は高く、引き続き被害拡大を防ぐための注視及び取組を続けます。また、特定商取引法及び預託法改正、いわゆるデジタル・プラットフォーマー問題やカジノ問題等の近時の諸課題にも取り組んでまいります。


(8) 貧困問題への取組

生活保護基準の引下げや非正規労働者の増加、低賃金などによる貧困層の拡大等ばかりでなく、コロナ禍に伴う就労先の減少によって、社会的弱者へのしわ寄せが深刻です。


2019年2月に公表した「生活保護法改正要綱案(改訂版)」に基づく法改正を求めるとともに、いわゆる水際作戦の防止など運用改善に取り組みます。また、コロナ禍を踏まえ、2020年5月に住居確保給付金の支給要件緩和と積極的活用、生活保護制度の運用の緩和と積極的活用、失業給付の受給と雇用調整助成金の支給拡大を求める各会長声明を、同年6月に最低賃金額の引上げや全国一律最低賃金制度の実施を求める会長声明をそれぞれ公表しており、これらに基づき各制度の実施や更なる活用を求めます。


(9) 労働者の権利

迅速な労働紛争解決のために有益な役割を果たしている労働審判制度がより効果的に機能するための方策を検討し、労働審判制度に適した事案の解決手段として同制度を選択してもらうための取組を進めます。また、外国人も含めた労働問題、特にコロナ禍の中で苦しんでいる労働者の救済策の充実にも取り組みます。さらに、幅広い世代の各段階に応じたワークルール教育を推進する法律の制定を支援する諸活動を推進するとともに、現在も行われているワークルール教育の教材作成、教育の担い手の供給、学校関係者その他の教育実施主体との緊密な連携等を継続していきます。


(10) 個人通報制度の導入と国内人権機関の設置

日本政府はパリ原則に則った国内人権機関の設置と人権条約に基づく条約機関への個人通報制度の導入を国連から勧告されていますが、いまだ応じていません。


日弁連は、2019年10月に徳島で開催された人権擁護大会において個人通報制度の導入と国内人権機関の設置を求める決議を行い、その後も院内集会を開催するなどしており、引き続き、与野党、法務省、外務省に積極的に働きかけ、これらの制度実現に向けて邁進します。


(11) 性の平等と多様性を尊重する社会の実現

全ての個人が互いを尊重し、性別に関わりなく個性と能力を十分に発揮できるようにすることは、社会の多様性と活力を高める極めて重要な課題です。性的指向や性自認による偏見や差別をなくすための法律相談の充実や、選択的夫婦別姓の実現などに向けて市民への啓発活動や政府に対する働きかけを積極的に行います。


また、日弁連内部においても、その方針決定過程へ女性会員が参加する機会を拡大するための施策を更に前進させます。


(12) 公害・環境問題への取組

現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受し、健康で文化的な生活を確保できるようにするため、公害・環境破壊の根絶を目指すとともに、生態系の保全と持続可能な社会の実現に向けて取り組みます。また、市民が権利として国や地方自治体の意思決定に参画し、かつ環境保全のための司法手続にアクセスできる制度の実現を目指します。さらに、プラスチックごみ問題、気候変動問題、再生可能エネルギーの推進など、多様な環境問題に取り組みます。


(13) 法教育の充実

法の支配を浸透させ、自由で公正な社会を実現するためには、市民の一人ひとりが、憲法の根源的価値を理解するとともに、自らが社会を作っていく参加意欲を持つことが重要です。そのためには、早い年齢のうちから基礎的な法教育を行うことが重要であり、法教育は、これからの社会を担う市民を育てるための重要なインフラとして位置付けられるべきです。今後も、法教育に関する具体的な施策を国に対して求めていくとともに、若年層の法教育の充実のために、法教育の担い手の養成を目的とする教員等に向けたセミナーなどの実施、高校生模擬裁判選手権の企画運営や、会員による法教育授業の支援、関係機関との連携などを通じて、多くの人に広く法教育が浸透するよう、活動を続けていきます。


第3 弁護士業務の拡大・拡充

1 権利擁護活動の持続可能な業務への転換(国・自治体・日本司法支援センターとの連携)

弁護士による権利擁護活動を持続可能なものとするためには、財政的裏付けの下、権利擁護活動をボランティア的な活動から業務としての取組へと転換していく必要があります。そのためには、公益的業務について、国や自治体による活動との連携を強化し、適切な予算措置を求める取組を推進します。


国や地方公共団体における弁護士任用の促進、公金債権の管理・回収や包括外部監査人の就任促進、条例制定支援等、行政との連携の取組を一層推進します。また、子ども、高齢者・障がい者、生活困窮者等の福祉分野における法的支援を継続的・安定的に行うことができるよう事業化を推進し、弁護士による持続可能な権利擁護活動ができる取組を進めます。


また、司法アクセスの確保のためには、日本司法支援センターにおける民事法律扶助は重要な役割を担っています。そのため、その立替基準が業務量に見合った適正なものとなっているかどうかについて検証を進めるとともに、DV・離婚事案などの困難案件加算や償還免除の活用・拡大等に取り組みます。


さらに、日弁連が日本司法支援センターに委託している法律援助事業について、日本司法支援センターの本来事業とすることにより国費・公費化を目指します。


2 弁護士費用保険の拡充

弁護士費用保険については、従来の交通事故民事紛争についての弁護士費用を対象とする保険に加え、交通事故刑事事件の費用保険、一般の民事・家事事件を対象とした保険、医療機関や福祉施設向けの業務妨害対応費用保険、中小企業向け保険など、年々多様化が進んでいます。直近ではインターネットトラブルに関する保険も開発されるなど、紹介される弁護士に高い専門性が求められる分野も対象となってきています。研修の充実等により担い手となる名簿登載弁護士の裾野を広げ、事案に即した弁護士の紹介を円滑迅速に行える態勢の整備に努めます。並行して、保険から支払われる弁護士費用等をめぐる紛争をADRによって適正・迅速に解決していくことによって、制度の信頼性を高めていきます。他方で、各種保険商品における示談代行の実態について調査・検討を行い、保険会社等によって弁護士法第72条違反となる行為が行われないよう、保険会社等に引き続き注意喚起を行っていきます。


3 中小企業への法的支援

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響が長期化していることにより、多くの中小企業が深刻な経営上の打撃を受けています。前述のコロナ関係の事業者向け施策(第1の2(2))を実施するほか、関係省庁や外郭団体、各地の支援団体等との連携によりチャネルを更に広げて、中小企業の法的ニーズに応えるべく取り組みます。あわせて、中小企業支援に当たる弁護士の育成にも注力します。


2020年11月に中小企業庁に設置された「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」では、経営者の高齢化を背景とした事業承継円滑化という従来の目的だけでなく、先行き不透明な中で大胆なビジネスモデルの変革によって生産性を向上させる必要性が増しているという観点から、中小企業のM&Aの重要性がこれまで以上に高まっているという認識の下、中小M&Aの円滑な実施に向けた環境整備等が議論されました。中小M&Aにおいては、特に売り手側の中小企業に対する弁護士の支援が強く求められるところであり、この分野に弁護士が幅広くかつ適切に関与していくための仕組み作りに取り組みます。


4 国際展開

2019年7月、グローバル化する社会において求められる弁護士の活動を拡充するため、「国際戦略グランドデザイン」を策定しました。中小企業の国際業務支援、在留邦人・在日外国人への法的支援、国際公務、国際交流への取組を進めるとともに、それに携わる弁護士の育成にも積極的に取り組みます。国際取引をめぐる裁判外紛争解決のための物的インフラとして、2020年3月、日本国際紛争解決センターの審問施設が東京に開設され、同年10月にオープニングイベントが開催されました。また、仲裁法をUNCITRAL国際商事仲裁モデル法と見合う内容に改正すべく、法制審部会で検討されています。人的インフラとしての、国際仲裁・調停で活躍できる弁護士の育成・支援の活動も進めていきます。


5 非弁行為への対処と業際問題への取組

弁護士法第72条が厳格な資格要件の下で弁護士に法律事務の独占を認めた趣旨に則り、同条の解釈適用に関する事例の収集と調査研究を踏まえた議論を更に深め、隣接士業の権限逸脱行為や無資格者による他人の法律事件への介入に対して厳正に対処します。裁判のIT化やその他の制度改正検討の場面で散見される隣接士業の権限拡大要求の動きに対しては、市民の権利擁護や利益に資するか否かという観点に基づき、毅然とした対応を取ります。また、法的に競合している分野については、市民の権利擁護という視点で弁護士の優位性を訴えつつ、同時に、隣接する各専門分野相互間の連携など、真に市民の利益となるための協働も模索します。


第4 法の支配の確立のための司法基盤の整備

1 民事司法改革への対応

2020年3月10日の「民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議」において、民事裁判手続のIT化、知財司法の紛争解決機能強化、国際仲裁の活性化などに加え、在留外国人の司法アクセスの確保、中小企業の海外展開支援、国際法務で活躍できる人材の育成などの国際化対応といった民事司法制度の重要課題について広範にわたって今後の方向と具体的政策を示す取りまとめがなされました。また、同取りまとめでは、現在、日弁連、最高裁及び法務省による「民事司法の在り方に関する法曹三者連絡協議会」において検討が進められている情報・証拠収集制度の充実及び家事事件に関しても、引き続き検討することの必要性・重要性が指摘されています。特に、急速に進行している民事裁判手続のIT化については、本人サポートの態勢整備も含めて様々な対応が必要です。また、上記取りまとめで指摘された残された課題を鋭意検討し、会員の理解と協力を得ながら、より良い民事司法制度の構築を目指して取り組んでいきます。


2 家事法制とIT化への対応

現代社会における家族の在り方の多様化を背景として、法制審議会において親子法制及び家族法制に関する部会が設置され、子に対する懲戒権、嫡出推定制度、離婚後の子の養育、親権等について調査・検討が進められています。あるべき法制度について検討を深め、日弁連の意見が適切に法改正に反映されるよう取り組みます。


また、家事事件手続のリモート化、とりわけウェブ会議の早期導入が望まれており、その実現のために、法曹三者連絡協議会における最高裁・法務省との協議を継続しながら、必要な法規の改正等に向けて積極的に取り組みます。


3 弁護士過疎・偏在解消の取組、法律相談センターの活性化

国民一人ひとりの基本的人権が保障されるためには、全国津々浦々に法の支配が浸透していくことが必要です。日弁連や各弁護士会連合会、各弁護士会の努力により、地方裁判所の支部単位で弁護士が1人又は0人の、いわゆる弁護士ゼロワン地域は概ね解消されていますが、いまだ弁護士に対するアクセスが容易でない地域も多く存在しています。引き続き地域の実情に応じた弁護士過疎・偏在解消に向けた取組を推進します。


ひまわり基金法律事務所については、開設費・運営費等の経済的支援や支援委員会による人的支援を行っており、今後もこの支援を推進します。過疎地に赴任する弁護士の養成は、これまで都市型公設事務所が中心となって養成を行ってきましたが、赴任希望者が減少している昨今の状況や養成事務所の経済的負担を考慮し、2020年度、養成支援補助金を大幅に増額するとともに、一定の要件を満たす一般養成事務所にも加算対象を拡張する制度改正を行いました。今後も安定的・継続的に赴任弁護士の人材確保と養成を行うため、赴任弁護士のキャリアパスも視野に入れた更なる施策を検討し、実施します。


新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、電話相談の活用などこれまで対面での相談を大前提としてきた法律相談事業の在り方について再検討を促す契機を与えました。更に急速に普及したウェブ会議システム等のIT技術と過疎地の法的ニーズとの相性なども見極めつつ、コロナ後も見据えた検討と改善を実行します。


4 司法アクセスの拡充

(1) 裁判所支部機能の拡充と司法予算

司法予算は、国家予算の0.3%程度で、国家予算の伸びに比べて伸び率が低い傾向にあります。また、2011年から2020年の10年間で弁護士は約1万2000人増加(約1.4倍)となったのに対し、裁判官は大幅な増員はされていません(弁護士白書2020年版)。市民にとって身近で利用しやすく、頼りがいのある民事司法を実現するためには、司法予算を充実させ、裁判所の人的・物的基盤を整備することが重要と考えます。とりわけ市民の司法アクセス改善のためには、裁判所支部機能の拡充が求められます。日弁連は、引き続き、非常駐支部の常駐化、開廷日の拡大、合議事件取扱支部拡大、家庭裁判所出張所の増設・運用改善、労働審判実施支部の増加などの課題に取り組んでいきます。


(2) 改正総合法律支援法に基づく扶助の拡充と適切な運用

2018年1月に施行された改正総合法律支援法に基づき、日本司法支援センターが行っている認知機能が十分でない高齢者・障がい者等やDV・ストーカー・児童虐待の被害者、大規模災害による被災者に対する法律相談事業について、利用者にとって利用しやすい制度となるよう、適正な運用を目指します。


(3) スタッフ弁護士の人材確保と支援

日本司法支援センターによる法律事務の提供は、一般契約弁護士(ジュディケア弁護士)が担うことを基本としつつ、常勤弁護士(スタッフ弁護士)がこれを補完するほか、司法ソーシャルワークの担い手など、全体として様々な活動を担うことが期待され、司法アクセスの拡充に大きく寄与しています。このようなスタッフ弁護士の重要性に鑑み、人材確保、養成及び支援に努めます。


第5 法曹養成問題と法曹人口問題への取組

1 法曹養成問題への取組

法曹志望者が減少傾向にある中、法曹の魅力を高め、これを的確に発信していく必要があります。2020年度より法学部に法曹コースが設置され、法科大学院との連携を強化して、法科大学院在学中の司法試験受験を認める改革が行われています。新しい制度が適切に運用されて法曹を志す若者が増加するよう十分に見守り、必要に応じて意見を述べ、提言を行っていきます。


2 法曹人口問題への取組

法曹人口問題については、日弁連が従来から求めてきた司法試験合格者1500人への減員がほぼ達成されたと言える状況にあることから、2020年7月、法曹人口検証本部を設置しました。同本部では、2012年3月15日付け「法曹人口政策に関する提言」に示された現実の法的需要、司法基盤整備の状況、法曹の質等の観点から、提言後の状況の変化も踏まえて、今後の司法試験合格者数の検討を行っています。2021年度中に今後の方針について取りまとめることを目指します。


第6 刑事司法制度の改革

1 人質司法を打破するために

無罪を主張し又は黙秘権を行使している被疑者・被告人について、殊更に長期間身体を拘束する勾留・保釈の運用(「人質司法」)は、憲法及び国際人権法に違反するものであり、国際的にも批判されております。人質司法の解消に向けての立法事実の集積と身体拘束より制限的でない代替措置についての検討について、引き続き取り組んでいきます。


2 取調べの全件・全過程の録音・録画の実現

改正刑事訴訟法により2019年6月から取調べの全過程の録音・録画が開始されましたが、その対象は裁判員裁判対象事件及び検察官独自捜査事件における逮捕又は勾留された被疑者の取調べに限定されています。録音・録画が不適正な取調べを防止するために必要であることは、参考人の取調べも含め、事件の軽重、種類、逮捕・勾留の有無によって変わることはありません。


日弁連は、改正刑事訴訟法の附則に定める施行後3年経過後の見直しの際に、取調べの全過程の録音・録画の対象を全事件に広げるべく、立法事実となるべき事例の収集分析に引き続き取り組んでいきます。


3 弁護人立会権の確立

憲法が保障する弁護人の援助を受ける権利及び黙秘権の観点から、取調べにおける弁護人の立会いは極めて重要であり、2019年10月に徳島で行われた人権擁護大会では、「弁護人の援助を受ける権利の確立を求める宣言-取調べへの立会いが刑事司法を変える」を採択しました。また、法務省で開かれた法務・検察行政刷新会議の2020年12月の取りまとめにおいては、改正刑事訴訟法の3年後検討の場を含む適切な場において、弁護人立会いの是非も含めた刑事司法制度全体の在り方について検討がなされるべきことが明記されました。


これらを受けて、2021年度は、弁護人立会権の確立に向け、実践的な活動及び立法提言の両面において、本格的な取組を進めてまいります。


4 逮捕段階の公的弁護制度の実現

勾留された全ての被疑者を対象とする国選弁護制度が2018年6月に開始し、全国で円滑に運用されています。


今後はさらに、逮捕段階における公的弁護制度の実現を目指して、各弁護士会における対応態勢や課題について検討し、連携を図り、全国的な運動につなげていきます。


5 全面的証拠開示制度の実現

改正刑事訴訟法に基づき、2016年12月から類型証拠開示の対象の拡大及び証拠の一覧表交付制度が施行されました。しかし、えん罪を生まない刑事司法制度を確立するためには、全面的証拠開示の実現が不可欠であり、全面的証拠開示の立法事実となるべき事例の収集分析に引き続き取り組んでいきます。


6 刑事手続のIT化

社会全体でデジタル化の動きが加速する中で、刑事手続についても法務省に検討会が設置され、データ化やオンライン化といった情報通信技術(IT)の活用が検討されることになりました。


刑事手続のIT化が、防御準備のための証拠開示に要する時間と費用を削減し、遠隔地等における充実した接見交通を可能にし、裁判所支部で行われた勾留・保釈の裁判に対する迅速な不服申立て等を可能にするなど、憲法が保障する防御権、迅速な裁判を受ける権利や弁護人の援助を受ける権利の実効性を高める方向で進められるよう積極的に取り組むとともに、データ化・オンライン化を踏まえた情報セキュリティの確保の在り方について、検討を進めます。


7 更生支援・再犯防止の取組

罪に問われた高齢者・障がい者等の円滑な社会復帰の実現及びその結果としての再犯の防止のためには、未決拘禁段階における支援(入口支援)から刑務所出所段階での支援(出口支援)まで、切れ目のない支援がなされることが重要です。更生支援計画書の作成・活用や多方面における法的サポート等に向けた取組を、国、自治体、福祉専門職等と協力しながら進めてまいります。


8 再審法の改正

現行のいわゆる再審法(刑事訴訟法第4編再審)の規定はわずか19条しか存在せず、裁判所の裁量に委ねられていることから、判断の公正さや適正さが制度的に担保されていません。そのため、再審請求手続における証拠開示は裁判所によって格差が生じており、再審決定に対する検察官の不服申立てが認められていることによりえん罪被害者の救済が長期化しています。


2019年10月の人権擁護大会では、再審請求手続における全面的な証拠開示の制度化と再審開始決定に対する検察官による不服申立て禁止を含む再審法の改正を速やかに行うように求める決議を採択しており、再審法改正に向けて引き続き粘り強く取り組みます。


9 全面的な国選付添人制度の実現

国選付添人制度の運用状況については、対象事件数に占める国選付添人の選任件数(選任率)について改善傾向が見られるところ、引き続き、最高裁判所との定期的な協議を通じて注視していきます。


被疑者国選弁護制度の対象範囲が勾留された全ての被疑者に拡大された結果、被疑者国選弁護人が選任された少年の被疑事件について家庭裁判所送致後に国選付添人を選任することができないという事態が生じています。国選付添人制度については、身体拘束事件全件への対象拡大の実現を目指します。


第7 若手弁護士への支援

1 谷間世代への支援

2018年5月の定期総会において、安心して修習に専念するための環境整備を更に進め、いわゆる谷間世代に対する施策を早期に実現することに力を尽くす決議を行っています。当該決議に従い、司法修習生の修習期間中に給与及び修習給付金の支給を受けられなかった、いわゆる谷間世代の会員に対する給付金の制度や修習期の新しい法曹の活動を支援するための施策の実現に向けた取組を着実に実施します。また、国費による是正措置としては、谷間世代に対する一律給付を求める運動を進めていきます。


2 新たな若手支援策

日弁連の会員のうち若手会員の占める割合が高くなっております。日弁連は、若手支援策として登録5年目以内の弁護士が業務について幅広く電話で相談できる「弁護士業務支援ホットライン」、対象年齢を小学生以下に拡大した「育児期間中の会員に対する保育サービス利用料の補助」を行い、修習生向けに就職相談会の開催、ひまわり求人求職ナビ等の各種広報媒体による求人情報の提供などを行っています。若手会員が新たな活動領域を開拓する体制を支援します。いわゆるブラック事務所問題については、情報を収集・分析し、改善に向けて取り組みます。


第8 男女共同参画の推進

日弁連では、2018年度からの5か年計画である「第三次日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画」を実施しています。副会長に占める女性会員の割合を高めるための女性副会長クオータ制が2018年度から実施されており、さらに2021年度から、女性理事クオータ制度によって選任された理事を含む理事会が始動します。今後も、日弁連の政策・方針決定過程への女性会員の参画拡大を目指し、会員の意識向上や啓発を含む環境整備を行い、各委員会や弁護士会での取組・進捗状況をフォローアップするなど、積極的に施策を推進します。


女性弁護士が業務面でなお一層活躍できる環境作りが必要です。子育て世代のテレワークなどの法律事務所における働き方改革、委員会活動へのウェブ会議による参加など、育児期間中の会費免除や会務・研修時等の保育費用の補助のほか、更に進展した取組が必要です。会員や事務職員等に対するセクシャルハラスメントについては、事案に応じて調査委員会を設置して助言や勧告などを行っていますが、会員や事務職員への更なる周知が必要です。


さらに、内閣府男女共同参画局と連携の上、女性社外役員候補者名簿提供事業の利用を促進し、企業に対しても働きかけるなど、社会のダイバーシティを推進するために、弁護士会内と社会の両面から男女間格差を解消する取組を進めます。


第9 弁護士自治を堅持する方策等

1 不祥事対策

弁護士自治を堅持するためには、私たち自身が間断なく不祥事対策に取り組み、市民からの信頼を強固なものとしなければなりません。預り金等の適正管理を更に進めるとともに、依頼者見舞金制度が適切に運用されるよう努めます。


倫理研修を更に充実したものとし、会員の倫理意識の向上に努めます。


また、弁護士会の市民窓口及び紛議調停の機能強化、懲戒制度の運用面での工夫(会請求や事前公表等)など、実務面の対策を推進するとともに、会員への支援策(メンタルヘルスカウンセリングや会員サポート窓口等)の充実を図ります。


2 FATF相互審査への対応

2019年にFATF(金融活動作業部会)による第4次相互審査が行われました。当初2020年の夏頃公表される予定であった審査結果は、コロナ禍の影響で、公表が1年延期されています。審査結果が明らかになり次第、弁護士自治の下、日弁連としての対応を進めていきます。


なお、会員に対しては、弁護士自治堅持のため、依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存等に関する規程・規則に定めた義務(本人特定事項の確認・記録の保存・年次報告書の提出)の履行の徹底を引き続き要請していきます。また、弁護士会に対しては、弁護士会が会員に対する監督者としての役割を実効的に果たすための支援を行っていきます。


3 会員の会務参加の促進

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響によりウェブ会議システムを活用した会務運営が一気に浸透し、会員の移動時間の負担は大幅に軽減されました。引き続きセキュリティ対策を講じながら効率的な会議運営や資料共有を行い、一人でも多くの会員が会務に参加できる体制を目指します。各種会議のオンライン化については、各会議体の性質や運営上の課題を整理した上で、オンライン化に適したものは積極的にオンライン化を推進し、リアル参加とオンライン参加の併用によって会議の更なる充実に努めます。


4 小規模弁護士会への支援

弁護士自治を堅持するためには、全国各地の弁護士の活動をサポートしている各弁護士会がしっかりと活動できるように、その財政的基盤を支える必要があります。特に、小規模弁護士会では少ない会員数で会務全般を支えなくてはならず、より負担が大きいと考えられます。小規模弁護士会に対する財政的支援について、より合理的・効率的な支援になるよう見直しを行ったところですが、今後もより良い支援の在り方を考えていきます。


5 会財政の見直し

重要な施策を行うために必要な支出は大胆に行うべき反面、無駄な支出がないかを厳しく見ていく必要があります。各種イベントのスリム化等の見直しや委員会の統廃合等により、適正な会財政を目指します。特に、コロナ禍に伴う各種支援の実施や会務の変容等を踏まえ、実態に即した財政の在り方を検討していきます。


6 会長選挙規程の改正

現在の会長選挙規程では、立候補に当たって、立候補の届出とともに、費用として300万円を納付しなければならず、一定の得票数を獲得したとしても返金されません。様々なバックグラウンドを持った会員が立候補できるよう一定の得票を得た場合には、納付した費用の一部を返還する制度の導入を行うことが必要です。また、立候補者が、容易かつ効果的な方法で自らの政策を多くの会員に対してより確実に訴えることができるよう、選挙公報の早期発行のための立候補期間の短縮、一定枚数に上限を設けた上でファクシミリによる選挙運動を可能にするようにします。


第10 広報の充実

「日本弁護士連合会広報中長期戦略」(2018年2月策定)に基づき実施している弁護士のイメージアップ広報、弁護士の仕事を市民や企業に知ってもらう広報、会員の利益に資する広報に引き続き取り組みます。これに加え、法曹の魅力を発信する広報にも力を入れます。また、市民や企業が必要とする情報が「伝わる」広報のために、情報の受け手である市民や企業のニーズに配慮したコンテンツ及び媒体を活用していきます。さらに、日弁連が主張する施策の実現に資するよう、記者会見やプレスリリース・プレスセミナーなどのマスメディアに対する働きかけについても、引き続き積極的に取り組みます。


他方で、これまで実施された広報の成果を検証し、より効果的・効率的な広報活動を推進します。