養育費の不払い解消の方策に関する意見書

2020年11月17日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

当連合会は、法務省の「養育費不払い解消に向けた検討会議」が2020年9月9日付けで公表した「養育費の不払い解消に向けた当面の改善方策(中間とりまとめ~運用上の対応を中心として~)」等を踏まえ、同年11月17日付けで意見書を取りまとめ、同月19日付けで法務大臣宛てに提出しました。


関連意見書等

養育費・婚姻費用の新しい簡易な算定方式・算定表に関する提言(2016年11月15日)

「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」に対する意見書(2020年11月18日)


本意見書の趣旨

2020年(令和2年)6月29日に法務省に設置された「養育費不払い解消に向けた検討会議」(以下「検討会議」という。)においては、同年9月9日付けで公表された「養育費の不払い解消に向けた当面の改善方策(中間とりまとめ~運用上 の対応を中心として~)」(以下「中間取りまとめ」という。)を経て、12月には制度改革を含めた最終取りまとめが発表される予定である。日本弁護士連合会(以下「当連合会」という。)は、子どもの最善の利益に沿った養育が確保される社会を構築することは国の責務であり、養育費の不払い解消は国が主体的に関与し支援すべき問題であるとの基本的な観点から、これまでの検討会議の議論を踏まえ、最終取りまとめが予定されていることを受けて、その内容や今後の取組について次のとおり提言する。


1 民法において、非監護親が未成熟子の養育費支払義務を負うことを明文化すべきである。その際、扶養義務の始期及び養育費の取決めについての考慮要素を列記すべきである。


2 養育費の支払に関する合意に関し、裁判所、厚生労働省等の養育費実務関係機関、当連合会及び本取りまとめを主宰した法務省は、2019年(令和元年)12月23日付けで公表された標準算定方式・算定表(令和元年版)(以下「改定標準算定表」という。)及び当連合会が2016年(平成28年)11月15日付けで公表した 「養育費・婚姻費用の新算定表」(以下「新算定表」という。)を検討し、婚姻費用・養育費が自動計算されるツールのための新たな算定方式を早急に策定すべきである。


3 前項の算定方式に基づき、関係機関は原則的な婚姻費用・養育費が自動計算されるツールをウェブサイトにおいて速やかに公表すべきである。当該自動計算ツールが公表されるまでは、現行の改定標準算定表の基準を自動計算されるツールをウェブサイトにおいて公表すべきである。


4 当事者間における養育費の取決め合意を債務名義化するために、各弁護士会におけるADR(裁判外紛争解決機関)と管轄の家庭裁判所が連携して、簡易迅速な調停の成立ないし調停に代わる審判を活用する運用の試行を開始すべきである。


5 弁護士・弁護士会は、①法律相談窓口の多様化・専門相談窓口の設置等、②弁護士による養育費問題相談会の開催、③養育費問題に関する弁護士研修の充実、④弁護士に関する情報提供の充実等について、各弁護士会の実情に応じて積極的に取り組む。当事者の要望が多い無償の法律相談等に関しては、国・地方自治体による応分の負担が検討されるべきである。


6 養育費支払の履行を確保することは国の責務であることから、取り決められた養育費が突然支払われなくなった場合、子どもの生活を保障するために、国が義務者に代わって子どもを養育監護する者に緊急措置として一時的に養育費を支払う制度を設けるべきである。継続して支払われない場合の立替制度については更に検討すべきである。


7 養育費債権の回収のためにサービサーを活用することについては慎重であるべきであり、現時点で債権管理回収業に関する特別措置法(以下「サービサー法」という。)の改正による養育費債権の特定金銭債権化はすべきではない。支払義務を果たさない支払義務者に対する督促は、家庭裁判所の履行勧告等が十分に活用されるべきである。


8 保証会社の利用については、保証会社における養育費の取扱いは始まったばかりであり、保証会社の業務内容、広告の妥当性、保証債務の履行状況等の検証も不十分であるから、現時点では保証会社の利用は推奨できない。




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