本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律の適正な運用を求める意見書

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2020年9月10日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

当連合会は、2020年9月10日付けで「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律の適正な運用を求める意見書」を取りまとめ、9月24日付けで内閣総理大臣、法務大臣、文部科学大臣、総務大臣、警察庁長官、都道府県知事及び全国市長会会長宛てに提出しました。


本意見書の趣旨

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(以下「解消法」という。)を適正に運用するため、以下の内容を検討すべきである。


1 国は、教育内容への過度の介入にならないよう配慮しつつ、不当な差別的言動解消のための教育に関する取組を把握した上、教育現場に対し、差別の歴史的背景を踏まえることの重要性、何が不当な差別的言動に該当するのかについて、その典型例も含め周知することの重要性を示し、全国で不当な差別的言動を解消するための教育活動が実施されるよう、取り組むべきである。


2 不当な差別的言動を伴うデモへの対応について


(1) 不当な差別的言動を伴うデモ(以下「ヘイトデモ」という。)が行われる蓋然性の高い場合に警備の警察官が行う解消法の趣旨に関するアナウンスは、今後も継続されるべきである。


(2) 上記アナウンスが表現行為に対する萎縮効果をもたらすことがないよう、国は基準を策定し、各都道府県警を通じて警察官に対する解消法に関する研修を行い、かつ、アナウンスの実施状況につき第三者を含めた形で事後的に検証する体制を整えるべきである。


(3) ヘイトデモの現場警備に当たっては、不当な差別的言動に対して反対の声を挙げる人々(以下「カウンター」という。)が、他の歩行者の通行を妨げていない場合や、デモ参加者との衝突の具体的な危険がない場合にまで、カウンターの移動の自由や表現の自由を過度に制限することがないよう、十分な配慮がなされるべきであり、その配慮がなされた実施状況につき第三者を含めた形で事後的に検証する体制を整えるべきである。


3 国及び地方公共団体は、インターネット上の不当な差別的言動について、特定個人を対象にするもののみならず、集団等を対象にするものであっても、プロバイダへの削除要請を積極的に行うべきである。


4 不当な差別的言動が行われる場合の公の施設の利用制限に対する取組について


(1) 地方公共団体は、自らが管理する公の施設において不当な差別的言動が公然と行われるおそれが客観的事実に照らして具体的に明らかだと認められる場合には、その利用制限ができるよう条例を改正すべきである。なお、前記利用制限に関して、いわゆる「迷惑要件」を課すべきではない。


(2) 地方公共団体は、公の施設利用制限を実効的かつ適切に行うために、専門家を含む第三者機関に要件該当性を判断させる仕組み等を明記したガイドラインを制定すべきである。




(※本文はPDFファイルをご覧ください)