パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)(案)に関する意見

2019年5月8日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

2019年4月25日、環境省地球環境局総務課低炭素社会推進室は、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(仮称)(案)」に対する意見募集を行いました。


日本弁護士連合会は、本件について2019年5月8日に意見を取りまとめ、同年5月15日付けで環境省地球環境局総務課低炭素社会推進室へ提出しました。


本意見書の趣旨

第1 温室効果ガスの排出削減目標について(該当箇所:はじめに及び第1章)

第1章2「我が国の長期的なビジョン」(8~9頁)について反対である。 同項目では、「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」とする現行の長期的目標を踏襲しているが、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑えることを明記した上で、現行の長期的目標から削減率を引き上げ、温室効果ガスの排出を実質ゼロに近づけたものとすべきである。

また、同目標に至る経路として、2030年度の目標について、2015年7月に国連に提出した約束草案で示した削減目標(2013年度比26%削減(1990年度比では18%削減))を踏襲しているが、1990年度比40%以上削減に引き上げ、2040年には1990年度比60%以上の削減とすることを明記すべきである。


第2 石炭火力発電について(該当箇所:第2章第1節1及び第3章第3節)   

第2章第1節1(3)②(a)「CCS・CCU/カーボンリサイクル」(16~17頁)、同(c)「石炭」(18頁)、第3章第3節2(2)①「相手国の政策・制度構築と他国への横展開の強化」(72頁)の記載について基本的に反対である。

石炭火力発電所の新設は計画中及び工事中のものを含めて認めず、既設の石炭火力発電所についても早期に廃止させる方針を明確にし、その実現のために必要な措置を採ることを明記すべきである。


第3 再生可能エネルギーの導入について(該当箇所:第1章3(3)及び第2章第1節)

第2章第1節1(2)「目指すべきビジョン」(14頁)について基本的に反対である。原子力に頼らない脱化石に向けて、再生可能エネルギーを主力電源とすることを明確にすべきである。

さらに、そのための措置として、同(2)①「再生可能エネルギー」(15頁)に2050年における再生可能エネルギーの導入目標を設定するとともに、現行では22~24%とされている2030年の電源構成における再生可能エネルギーの割合を少なくとも30%まで引き上げ、 その実現に向けた送電網の整備などの政策措置を盛り込むべきである。

また、再生可能エネルギーの導入によって環境に悪影響を及ぼす事態とならないよう、適切な法制度の整備を行うなど、再生可能エネルギーの拡大が地域の環境に悪影響をもたらさないために必要な措置を採ることを明記すべきである。


第4 効果的なカーボンプライシングの導入・強化について(該当箇所:第4章(5))

第4章(5)「カーボンプライシング」(78頁)について基本的に反対である。低コストで温室効果ガスの排出削減を可能にするために、効果的なカーボンプライシング(炭素の価格付け)を導入・強化することを明記すべきである。


第5 長期戦略のレビューについて(該当箇所:第5章)   

第5章「長期戦略のレビューと実践」において、本長期戦略のレビューは6年程度を目安に行うとされているが、遅くとも第1回グローバル・ストックテイク(2023年開催予定)までにレビューを行い、長期エネルギー需給見通し又はエネルギー基本計画と共に改定を行うべきである。


       

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