財務省関税・外国為替等審議会関税分科会 「知的財産権侵害物品の水際取締りに関するワーキンググループ」における日本弁護士連合会の意見(その2)


2005年11月25日


 

財務大臣 谷垣 禎一 殿


日本弁護士連合会
  会長 梶谷  剛


財務省関税・外国為替等審議会関税分科会
「知的財産権侵害物品の水際取締りに関するワーキンググループ」における日本弁護士連合会の意見(その2)




平成17年10月27日に行われました財務省関税・外国為替等審議会関税分科会「知的財産権侵害物品の水際取締りに関するワーキンググループ」において当連合会の意見を別紙のとおり松尾和子弁護士がプレゼンテーションいたしましたが、これに関し、改めて当連合会の意見を以下の通り補充いたします。


第1 専門的機関の制度改善について


貴省ワーキンググループにおいては、現行の輸入差止申立手続及び輸入差止認定手続の枠組みを変更することなく、税関長の下に有識者会議を設け、必要があれば意見を求めるとすることにより、手続きの透明性・公平性を図る方針のようである。


しかしながら、上記対策では、当事者の手続保障が未だに不十分である。
すなわち現状の手続では、輸入業者に対して、権利者と称するものが税関に輸入差止申立を行ったこと、及び税関がこれを受理したことを、事前に告知される機会は与えられていない。このため、輸入業者は、現実に貨物が差し止められた後でなければ、自己の貨物に対して輸入差止申立手続が受理されて開始されていることを知り得ないのである。
輸入業者に対して、輸入差止申立手続が受理されて開始されたことを告知し、意見を述べる機会を法的に保障すべきである。
そこで、あらためて当連合会の意見を下記の通り提出する。


当連合会の意見:
貴省ワーキンググループの改善案に反対する。
税関長が、自己の裁量で有識者の意見を聴く手続を設けるだけでは不十分である。


<当連合会の制度改善案>


  1. 輸入差止申立受理手続及び輸入差止認定手続において当事者双方に意見を述べる機会を与える、すくなくとも、申立人提出の疎明資料の評価につき常設の法定の専門的機関の意見を求めることとする。
  2. 税関長は、申立にかかる疎明資料の判断、供託に関する判断、疑義貨物の認定等々、認定ないし判断を要する事項につき疑義を見出したときは、技術的・法律的事項を問わず、上記専門的機関の意見を求めることとする。
  3. 上記専門的機関は合議制をとり、構成員の名簿は明らかにする。
  4. 税関長は上記専門的機関の意見を尊重することを法律に明記する。

 


第2 模倣品・海賊版の輸出・通過貨物の水際取締りについて


国内の知的財産権の侵害と輸出の取締りについて
貴省ワーキンググループにおいて、特許法、意匠法、商標法、著作権法等(以下総称して「知的財産関連法」という。)の解釈により関税関係法令を改正することの可否、及び、「輸出」行為が他の法令で規制されていない物品についても関税関係法令で独自に取り締まることの可否が検討されている(平成17年9月26日貴省配付資料3)。
これについて、当連合会は、平成17年10月27日開催の標記ワーキンググループにおいて、税関が機動的に水際で取り締まることができる方策についての意見書を提示したが(同日当連合会配布資料3の第2以下)、その趣旨を明確にするためにあらためて下記の点を補充する。


当連合会の意見:
関税関係法令の規定のみによって「輸出」行為を水際で取り締まることは不可能であり、知的財産関連法の改正を先行すべきである。


  1. まず、知的財産関連法が定める「譲渡」が「輸出」を含む概念であると解釈することは不可能である。そして、実体法上、排他的権利の実施行為に「輸出」が含まれていないにも拘わらず、手続法である関税関係法令によって独自に「輸出」を取り締まるべきではない。
    したがって、関税関係法令の規定のみによって「輸出」行為を水際で取り締まることは不可能であり、知的財産関連法の改正が先行されるべきである。
  2. なお、不正競争防止法、種苗法には、既に「輸出」が違法行為として定められている。これらについては、関税定率法を改正し、輸出に関する水際取締りを行うことは論理的には可能であると考えるが、この際には第一に述べた当事者に対する手続保障が確保されることが不可欠である。
    また、外国為替及び外国貿易法に基づく経済産業大臣の輸出許可手続との整合性を図る必要があることももちろんである。

以 上