中池見湿地の保全に関する意見書

2005年3月18日
日本弁護士連合会


本意見書について

1 湿地の重要性と保全の施策

湿地は生物多様性に富むだけでなく,水質浄化機能,レクリエーション機能,生活の糧を得る場所等として非常に重要な場所である。湿地保全は世界的潮流であるが,わが国でも環境基本計画,生物多様性国家戦略の策定,重要湿地500の公表等を行い,その重要性と保全の必要性を表明している。


2 中池見湿地の重要性

中池見湿地(面積約25ha)は,地下40mという世界的にも他に例を見ないほどの深さの泥炭層を形成し地質的に貴重な湿地である。また,この泥炭層が作り出す多様な水環境により,絶滅危惧種を含む多様な生態系が形成され,今や国際的にも注目される湿地となっている。


3 中池見湿地の保全のあり方

中池見湿地は,かつては大阪ガスのLNG基地計画により消滅の危機にあったが,計画の中止によって,開発ではなく保全という選択がされることになった。この保全のあり方について,敦賀市の中池見検討協議会で議論がされている。


中池見検討協議会では,中池見湿地の貴重さやその保全の重要性について十分に理解されていないと懸念される。このような場合,事務局がしかるべき情報提供を行えば良いが,事務局も都市計画法に基づく都市公園化の構想を提案するなどその価値を十分に把握しているとは言い難い状況である。適切な保全策を見出すためには,中池見湿地の価値を理解する学識経験者,住民を委員として選出することはもちろん,委員には議事録を含めた資料を事前に提供し,事前準備の時間を与えるとともに,広く議事や資料を公開し,広く意見の聴取に努めるべきである。


4 中池見湿地とラムサール条約

中池見湿地は,地下40mもの泥炭層や生物多様性によって,国際的にも注目される湿地であり,ラムサール条約の登録湿地にふさわしい湿地であり,国際的基準にも合致する。


環境省は,登録湿地の国内候補地の基準の一つとして,国内法で保全が担保されていることをあげているが,中池見湿地にはそのような保全担保措置がとられていない。しかしながら,中池見湿地は,国際的にも注目されており,登録湿地とするためにも早急に国内の保全担保措置がとられるべきであり,中池見湿地の自然が,泥炭湿地の多様な水環境が生み出す多様な生態系によって形成されていることからすれば,自然公園法にいう優れた風景地(1条)として,生態系の多様性の確保その他の生物の多様性の確保を旨(3条2項)として,近隣に位置する若狭湾国定公園と越前加賀海岸国定公園のいずれかの公園区域を拡張的に変更し公園区域とすべきであり,福井県は,早急にその申し出を行うべきである。


5 結論

以上のとおり,中池見湿地は国際的に注目される湿地であり,ラムサール条約登録湿地として保全するべきであるし,それにふさわしい保全策を講じるべきであるから,


  1. 敦賀市は,中池見湿地の都市公園構想を撤回し,ラムサール条約登録湿地とするにふさわしい保全策を決定し,かつ地域住民の理解を得られるよう,中池見検討協議会の委員構成を見直すと共に,広く住民や専門家の意見を聞き,
  2. 福井県は,敦賀市と協力して,若狭湾国定公園又は越前加賀海岸国定公園の公園区域を同湿地に拡張するよう申し出を行い,
  3. 環境省は,福井県の申し出を受けて,中池見湿地を公園区域として指定した上で,ラムサール条約の登録湿地とするための手続きをすべき

との意見を公表するに至った。


(※全文はPDFファイルをご覧下さい)