大規模自然災害に関する提言

2004年11月18日
日本弁護士連合会


 

本年、10月23日に、新潟中越地域で震度7の地震が発生し、未だに被災地では余震が頻発している。又、本年は台風が各地を10回も襲い、兵庫、福井をはじめ、各地に被害を与えた。我が国では、全世界の1割の地震が発生し、毎年台風が通過し、多数の火山を有する、希有とは言えないほどの自然災害を受ける国である。毎年被災地では、多くの被災者を出し、多数の人命と、財産が失われている。従って、当連合会は被災地を支援する活動は人権擁護活動の一環ととらえ、恒常的に取り組まなければならない。


既に当連合会は、2003年5月の総会で制定した、「全国弁護士会災害復興支援に関する規程」にもとづき、本年10月29日に、日弁連災害対策本部を設置し、新潟県弁護士会の支援要請に応じて、関東弁護士会連合会の支援統轄本部と連携して、新潟県中越地震の被災者の人権保護活動を開始した。 当連合会は、1994年に雲仙普賢岳噴火災害に関して「長期化大規模災害対策法等の立法措置を求める決議」を、1995年に「阪神・淡路大震災の被災者救済と市民本位の復興等を求める決議」を行うなどして、積極的な提言を行い、被災者の法的救済を求めてきた。しかし現状ではまだ到底十分とは言えず、特に新潟中越地震では、災害によって集落全体が存立できなくなる危険があり、被災者の人権保護のためには、地域を地域として生き残るようにしなければならない。そのためには、被災地の自助努力では限界があり、これを救済することは、まさに国が国民に対して負うべき責務である。そこで、日弁連としては、下記のとおり、緊急の提言を行う。


1.国に対する提言


(1)被災者生活支援法の見直しを検討すべきである。具体的には、適用要件の緩和(住宅再建資金の提供、半壊・一部損壊事例への適用)、住宅再建の補償額の増額(住宅再建資金を目的とした公的補償額を少なくとも300万円以上の支給)を行うこと。


(2) 農作物の被害の補償に関する立法を行うこと。


(3) 廃村(過疎)化対策や農業の再振興、農地の再整備など、財政措置を伴う公的な支援を行うこと。


(4) 復興は長期に及ぶことになるため、この復興を支える財政的な基盤を創立すること(復興基金の創設等)


(5) 過去の被災地、復興経験を共有し、今後の防災まちづくりなどの復興に役立つような、総合支援体制(災害総合研究所等の設置と財政的措置)を確立すること。


(6) 災害復興に関する事件について法律扶助決定をなすべき特別予算を緊急に計上すること。


2.自治体に対する提言


(1) 自治体が発行する罹災証明書について、罹災程度の判断基準を明確化・公表すること。


(2) 罹災証明の判断についての異議を受け付ける公的機関を検討すること。


(3) 行政が主催する法律相談所を被災地にきめ細かく配備し、弁護士及びその他隣接専門職種の総合マネージメントを積極的に行うこと。

以上