供託規則の一部改正に関する意見の提出について

日弁連総第42号
2004年8月25日


法務大臣 野沢 太三 殿


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛


供託規則の一部改正に関する意見の提出について


8月2日付で貴省より公表されて意見募集が行われている供託規則の一部改正に関し、当連合会は下記のとおり意見を提出いたします。



第1.意見の趣旨
  1. 要綱案によれば、供託制度の仕組みそのものが大きく変更されるので、規則の改正によらず、現行の供託法第2条そのものを改正すべきである。
  2. 供託の要件を具備しないオンライン供託申請が行われた場合、直ちに、要件を具備しない供託であり受理できない旨のメッセージを供託者に返すような仕組みを構築すべきである。これに対し、受理した場合は、受理証明書を電子的に送付すべきである。
  3. オンライン供託が受理されたことが明示された時点で、初めて、供託者が供託通知書の直接送付を行えるような仕組みにすべきである。
  4. 供託者による被供託者への供託書の直接通知の書式に関しては、オンライン供託の申請書と同一の書式による通知が可能となるような仕組みにすべきである。
  5. オンライン供託に関しては、供託金の受払いもオンラインで可能となるような仕組みを構築すべきであるが、特に供託金の納付に関しては、電子的な受理証明書の添付を要件とすべきである。
  6. 供託物払渡請求の手続きに関しても、オンライン申請で可能な手続きを構築すべきであり、オンラインでの本人確認方法を含めて、その手続きを検討すべきである。
  7. 供託制度のオンライン化に際しては、その利用者である国民(あるいは代理人)に取って、使いやすいシステム(ユーザ・フレンドリィなシステム)を提供すべきである。

第2.意見の理由
  1. オンライン供託に関する要綱を見る限り、かなり大きな改正と考えられる。
    例えば、

    1. 被供託者に対する供託通知書の送付は、原則として供託者自身が行うこととすること
    2. 供託物払渡請求の添付書面として、供託書正本又は供託通知書(供託規則第24条第1号及び第25条第1号参照)を不要とすること
    3. 供託物払渡請求時の印鑑証明書の添付に代わる本人確認手段を拡大することとされており、供託制度の仕組み自体が大きく変わることは明らかである。

    したがって、これだけの大改正を、規則の改正だけで行うのでは妥当ではなく、「法務大臣が定めたる書式」に基づく供託書による供託を認めている現行の供託法第2条そのものを改正すべきである。

    (参考)供託法第2条
    第二条  供託所ニ供託ヲ為サント欲スル者ハ法務大臣カ定メタル書式ニ依リテ供託書ヲ作リ供託物ニ添ヘテ之ヲ差出タスコトヲ要ス
  2. 供託要件の具備に関しては、形式審査とはいえ、供託所窓口において供託書の記載の仕方につき厳格な指導を受け、要件不備の申請は受理されない扱いを受けてきた。したがって、オンライン供託申請の場合に関しても、要件不備のオンライン供託申請に対しては、要件不備で受理できない旨のメッセージを申請者に送付できるような仕組みを採用しないと、オンライン供託申請者は、申請した供託が受理されたか不受理かわからないまま、供託通知書を被供託者に直接送付してしまうことも考えられるところである。その結果、供託通知書を受領した被供託者が、供託が受理されたか、不受理かわからないこととなり、受理されて初めて供託通知が発送されていた従来の実務と対比すればかかる場合の不都合は容認しがたいものがある。
    そこで、供託不受理の場合は、不受理通知を電子的に送付し、受理の場合は、受理証明書を電子的に送付し、その後供託通知を行えるようにすべきである。
  3. 上記の受理証明・不受理通知の制度が構築された場合は、受理証明書が送付された段階で、これを印刷し、供託者による被供託者への供託通知書に、かかる印刷した受理証明書を添付することを要件とすることが可能となる。かかる制度により、不受理の供託でも、供託通知書が被供託者に送付される不都合は回避できる。
  4. 直接送付する供託通知書の書式に関しても、供託申請者による任意の書式ではなく、オンライン供託申請した際に、画面に記入した書式を印刷して、そのまま被供託者に送付できるようにすれば、オンライン供託申請者にとって、紙の供託通知書を別途作成する手間が省けるし、供託申請書と供託通知書が一致しないなどのトラブルを回避できる。
    更に加えて、供託者による被供託者への供託通知は、法務局が供託申請者に対して、被供託者への供託通知書も電子的に送付し、これを申請者が印刷して郵送するなどの方法も考えられる。
  5. 「オンライン上で供託手続を完結させるためには、供託金の受払いについても、インターネット等を利用できるようにする必要があり、現在、関係省庁でその準備が行われている。」とのことであるが、そもそも支払がオンラインで完結しないと、オンライン供託はあまり大きな意味はない。更に加えて、前述したとおり、要件を具備しない供託であり受理できない旨のメッセージを供託者に返すような仕組みが構築できれば、インターネット等を利用した供託金の納付に関しても、法務局の発行した電子的な受理証明書の添付を要件とすることが可能となる。
  6. 要綱案では、「払渡請求の手続等をインターネットを介して行うことができるようにすること」を掲げているが、オンラインでの本人確認方法に関しては言及していない。
    「供託物払渡請求時の印鑑証明書の添付に代わる本人確認手段を拡大すること」を提案しているのみであり、そこで想定されている本人確認方法は、「例えば、「官庁又は公署から交付を受けた書類その他これに類するもの(氏名、住所及び生年月日の記載があり、本人の写真が貼付されたものに限る。)」にすぎない。
    供託払渡請求をオンライン申請で可能とする場合、オンライン上での本人確認方法をどのようにすべきかは困難な問題であるが、オンライン申請による供託物払渡請求手続きについても検討して明らかにすべきである。
  7. 供託制度のオンライン化に際しては、いたずらに行政手続きの効率化のみを追求せず、司法制度改革審議会意見書に基本理念として記載された法の支配を実現するための制度の一環として、その利用者である国民又はその代理人にとって、使いやすい制度の構築に努力すべきである。