死刑執行の停止について(要請)

日弁連総第24号
2004年6月14日


 

法務大臣  野沢 太三 殿


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛


 

死刑執行の停止について(要請)


1 要請の趣旨


死刑確定者57名に対し、死刑を執行されないよう要請する。


また、以下の死刑確定者は、確定日等の関係から特に死刑の執行が危惧されるが、現在、再審等の手続中ないしはその準備中であることから、その旨を付記する。


  1. 再審請求について抗告が棄却され、特別抗告中
  2. 再審請求準備中
  3. 公判再開申請中
  4. 恩赦出願準備中
  5. 恩赦出願準備中

2 要請の理由


(1)わが国では、4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し、死刑判決にも誤判が存在したことが明らかとなっているが、このような誤判を生じるに至った制度上、運用上の問題点について、抜本的な改善は図られておらず、誤判の危険性が不可避なままである。


また、死刑と無期の量刑につき、裁判所によって判断の分かれる事例が相次いで出され、死刑についての明確な基準が存在しないことも明らかとなっている。


さらに、死刑確定者は、国際人権(自由権)規約、国連決議に違反した違法状態におかれており、過酷な面会・通信の制限は死刑確定者の再審請求、恩赦出願をはじめとする権利行使の大きな妨げとなっており、これらの点での抜本的な改善が必要である。


(2)また、1989年に国連で死刑廃止条約が採択された後、1990年当時の死刑存置国96か国、死刑廃止国80か国に対し、2004年5月現在では、死刑存置国78か国、死刑廃止国117か国と、死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。


他方、日本においては、世論調査によれば、死刑存置支持が相当多数をしめると報道されてはいるものの、死刑制度の問題点についての情報は開示されておらず、世論調査の方法自体にも問題があり、必ずしも大多数の国民が将来にわたり永続的に死刑存置の意見であるとは言えない。


(3)このような国際的な潮流と国内的な状況の乖離を踏まえた上で、日本においても、死刑制度を存置するか廃止するかについて、早急に広範な国民的な議論を行う必要があり、当連合会は、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱しているものである(2002年11月22日「死刑制度問題に関する提言」…添付資料参照)。


(4)また、当連合会は、死刑の執行のなされるつど、会長声明・談話等を発表し、死刑の執行を停止されるよう要望してきたが、誠に遺憾なことに、これまで死刑の執行は繰り返されてきた。


特にこれまでの死刑の執行は、国会閉会直後や国政選挙直前あるいは年末など、国会による議論を避け、国民の関心が他に向けられやすい日程で行われてきており、今国会閉会の予定される6月16日から参議院選挙公示日である6月24日までの間に、死刑の執行の行われる危険性が高い。


(5)このような状況を踏まえ、当連合会は、法務大臣に対し、死刑確定者57名に死刑を執行されないよう、強く要請するものである。


また、以下の死刑確定者は、確定日等の関係から特に死刑の執行が危惧されるが、現在、再審等の手続中ないしはその準備中であることから、その旨を付記する。


  1. 再審請求について抗告が棄却され、特別抗告中
  2. 再審請求準備中
  3. 公判再開申請中
  4. 恩赦出願準備中
  5. 恩赦出願準備中

以上