日弁連新聞 第601号

就任のご挨拶
日本弁護士連合会会長
渕上 玲子

本年2月9日に実施された日弁連会長選挙において、会長に選出された渕上玲子です。どうぞよろしくお願いいたします。日弁連が設立されてから四分の三世紀を経て初めての女性会長ということで、当選以降、各方面から注目をいただいています。


社会のIT化・デジタル化はコロナ禍で急速に進み、弁護士業界を取り巻く環境も大きく変容しました。今後も進む司法のIT化・デジタル化は、すべての人にメリットが行き渡るものでなければなりません。


多様化、複雑化する現代社会において、家族の在り方や家族観はさまざまなものになっています。家族法制の変更も見込まれ、家庭裁判所の重要性はさらに増しています。紛争解決のスピードと実を上げるために、家庭裁判所の人的・物的拡充が必要です。


また、多様性を認め合う社会の実現に向けて、他者尊重と気付きの機会を大切に、男女共同参画を推進します。選択的夫婦別姓制度の実現に向け、国会および政府に対して強く訴えていきます。


刑事司法改革は道半ばです。取調べの録音・録画の全事件・全過程への対象拡大や、取調べへの弁護人立会権の確立等に加え、刑事手続のIT化とともにオンライン接見の導入、証拠開示制度の改善に取り組みます。また、再審法改正、死刑制度廃止、犯罪被害者支援を推進します。


本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震では多くの方が犠牲となり、地理的要因から復旧・復興が遅れています。亡くなられた方へのお悔やみと被災者の方へのお見舞いを申し上げます。毎年各地で水害や地震が多発しており、南海トラフ地震、首都直下地震などの大規模災害も発生すると予測されます。被災者支援とともに、その活動を通じて災害法制に関する立法事実を収集し、法改正等を国に提言していかなければなりません。


刑事弁護を受ける権利、裁判を受ける権利は基本的人権そのものです。弁護士のみに負担を求める制度ではその保障を実現できません。国選弁護報酬・民事法律扶助報酬の適正化と、利用手続の簡素化を求めていきます。


各種人権課題、弁護士偏在の解消、法曹志望者増加のための取り組み、いわゆる谷間世代を含む若手支援、弁護士の活動領域の拡大など、さまざまな課題に取り組んでいかなければなりません。


山積する諸課題を解決していくためにはすべての会員が一丸となって取り組む必要があります。皆さまのご理解・ご支援を賜りますようよろしくお願いいたします。



民事法律扶助制度の報酬改善を求める意見書
~まずは離婚関連事件から~

arrow_blue_1.gif民事法律扶助制度の報酬改善を求める意見書~まずは離婚関連事件から~


日弁連は、本年2月15日付けで「民事法律扶助制度の報酬改善を求める意見書~まずは離婚関連事件から~」を取りまとめ、法務大臣、財務大臣および日本司法支援センター理事長に提出した。


日弁連の取り組み

日弁連は、従前から民事法律扶助制度における給付制の実現や弁護士報酬の増額に向けて取り組み、2023年3月の臨時総会で採択した決議で、代理援助報酬の増額を求める取り組みを加速させる決意を表明した。これを踏まえて本意見書では、次の点について早急な改善を求めている。


今後、抜本的な報酬増額と利用者負担の軽減のための給付制・免除の拡大等を求めていく予定である。


意見の趣旨

①民事法律扶助制度が権利実現のための持続可能な制度となるべく、まずは離婚関連事件の代理援助における弁護士報酬について、業務量に見合うよう抜本的に改善すべきである。


②離婚調停事件は、離婚関連事件の中でも基本となる事件であり、かつ、特に業務量に照らして報酬が低額であるので、代理援助における着手金について、税別20万円を下回らないものとすべきである。


③離婚関連事件の代理援助において行われている関連事件減額・困難案件加算、離婚等の身分変動が得られた場合の報酬における評価、扶養料等の定期給付金の報酬に関する受任者による直接回収の制度については、受任者の業務量の観点から制度および運用の検討・見直しを行うべきである。


また、弁護士報酬の改善によって利用者の負担が増えないよう、民事法律扶助の立替・償還制から原則給付制への転換、償還免除の抜本的拡大等の措置を講じるべきである。


(総合法律支援本部  副本部長 原田直子)



「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に対する意見書

arrow_blue_1.gif「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に対する意見書


日弁連は、本年2月16日付けで「「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に対する意見書」を取りまとめ、文化庁に提出した。


意見募集の経緯

AI技術が進歩し、利用者の指示に基づき、テキスト、画像、音声、映像等のコンテンツを生成する「生成AI」の登場により、事業者のみならず一般ユーザーによっても、汎用的かつ高品質なコンテンツが大量に制作可能となった。生成AIの開発・利用が著作権を侵害するのではという懸念の声があり、AIの発展を推進する立場と創作者や著作権者の不利益を憂慮する立場の双方からさまざまな意見が述べられている。このような状況を踏まえ、本年1月23日、文化審議会著作権分科会法制度小委員会において、現時点でのAIと著作権に関する論点や考え方を整理した「AIと著作権に関する考え方について(素案)」が取りまとめられ、意見募集に付された。


意見書の概要

本意見書では、素案のとおりAIの問題について現時点の著作権法上の論点と解釈指針を示すことに基本的に賛成し、また、問題を検討するに当たって、既存の著作権法上の考え方との整合性等を踏まえて要件解釈を行うとする姿勢にも賛成している。


ただし、AIの開発・利用は世界的な規模で行われることや、作風の模倣、海賊版等の学習利用の問題はさまざまな立場から関心が寄せられている重要な論点であることに鑑み、今後のAI技術の発展とこれに伴うAI開発事業者、AI利用者、創作者、著作権者等の関係者の利益状況および各国の対応状況等を注視し、必要な場合には速やかに立法的措置を講じられるように検討を継続することを求めている。また、いわゆる僭称著作物問題への対応も検討を進めるよう求めている。

 

(日弁連知的財産センター  委員 山崎道雄)



ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言

arrow_blue_1.gif日本弁護士連合会ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言


日弁連は、本年2月15日付けで「日本弁護士連合会ダイバーシティ&インクルージョン推進宣言」を取りまとめた。


推進宣言策定の背景

近時、社会において多様性(ダイバーシティ)を尊重し、包摂性(インクルージョン)を推進する重要性が認識されるようになった。社会やコミュニティ、組織の内外において、さまざまな属性の人々がありのままで受容され、個性を生かして能力を発揮し、互いに理解し共存しつつ、公正で平和な社会を発展させていくという未来に向けた指針を描くことが求められている。


日弁連は2022年6月にワーキンググループを設置し、勉強会の開催や官公庁・企業等の諸団体の取り組みに関する情報収集、調査・研究等を通じて、ダイバーシティ&インクルージョンの推進のための基本方針について検討を重ね、本推進宣言の取りまとめに至った。


推進宣言の内容

①多様性の尊重

弁護士のみならず、日弁連が関係するすべての人々について、性別・性自認・性的指向・国籍・人種・民族・出自・障がいの有無・疾病の有無・年齢・家族関係などの属性や差異を受け容れ尊重する。


②包摂性の推進

弁護士のみならず、日弁連が関係するすべての人々が、その能力や個性を最大限に生かして活躍できるよう、さまざまな属性や差異に配慮し受け容れる。


③意識啓発と環境整備

多様性の尊重と包摂性の推進へ向けて、日弁連内部の意識啓発と環境整備に努める。とりわけ、ハラスメントや差別を取り除くため、研修・啓発活動等による弁護士の意識の変革・向上に取り組む。


今後に向けて

本推進宣言を受けた具体的な施策の実施が急務である。社会の動きも見据え、活動を加速させていく必要がある。


(ダイバーシティ&インクルージョンの推進に関するワーキンググループ  座長 松村眞理子)



民事法律扶助におけるひとり親世帯支援の拡大が実現します!

法務省および日本司法支援センター(法テラス)との間で実施してきた民事法律扶助に関する勉強会での取りまとめを受け、本年4月1日から、ひとり親世帯支援拡大のための制度変更が実現しました。


具体的には、民事法律扶助を利用した養育費の請求を伴う離婚等関連事件について、①一括即時償還制度の改善、②弁護士報酬の法テラス立替枠の拡大、③償還免除範囲の拡大の3点に関する制度変更です。


詳細は、日弁連会員専用サイト(HOME>その他事件処理>弁護士費用>民事法律扶助関係>日本司法支援センター(法テラス)関連情報)をご覧ください。



2024年度 役員紹介

3月8日に開催された代議員会(本人出席289人、代理出席279人)において、2024年度役員が選出された。就任に当たり、15人の副会長の抱負と理事および監事の氏名を紹介する。

 

上田 智司(東京・38期)

[出身]秋田県
[抱負]資格審査会、法科大学院センター、国選弁護本部、マネー・ローンダリング対策推進協議会、日本弁護士政治連盟などを担当します。会長を補佐し、日弁連が当面する課題の解決に取り組みます。



 

市川 正司(第一東京・41期)

[出身]東京都
[抱負]財務・経理、法曹養成制度改革実現本部、司法修習費用問題対策本部、多文化共生社会の実現に関するWGなどを担当します。会長を補佐し、日弁連の諸課題実現に向けて全力で取り組みます。




日下部 真治(第二東京・47期)

[出身]東京都
[抱負]主として国際関係と民事司法改革・AI・通信秘密保護関係を担当します。特に後者は大多数の会員の業務に影響しますので、視野を広く持ち、中長期的観点から望ましい施策の立案・実現に努める所存です。




伊藤 信吾(神奈川県・44期)

[出身]東京都
[抱負]綱紀・懲戒、民事介入暴力対策、業務妨害対策、弁護士業務改革、若手弁護士サポートセンター、住宅紛争処理機関検討などを担当します。会長を補佐し、日弁連の対処すべき諸課題について全力で取り組みます。




三浦 亜紀(千葉県・49期)

[出身]千葉県
[抱負]犯罪被害者支援、ADR、常勤スタッフ弁護士配置WG、ダイバーシティ&インクルージョン、法務研究財団などを担当します。会長を補佐し、直面する課題に対し真摯かつ全力で取り組んでまいります。




田下 佳代(長野県・42期)

[出身]香川県
[抱負]両性の平等、高齢者・障害者権利支援、弁護士会照会制度、広報などを担当します。誰もが個人として尊重される公平な社会実現のため、会長を補佐し、日弁連の諸課題に誠実に取り組みます。




大砂 裕幸(大阪・38期)

[出身]大阪府
[抱負]司法制度調査会、男女共同参画推進本部、リーガル・アクセス・センターなどを担当します。会長を補佐し、幅広い視野をもって、会員および社会からの信頼に応えるよう取り組みます。




緒方 賢史(奈良・52期)

[出身]福岡県
[抱負]総合法律支援本部、裁判官制度改革・地域司法計画推進本部、弁護士任官等推進センターなどを担当します。人の心と考えにアプローチし、意識の改革と止揚を生み出し、社会をポジティブに変化させる運動を行います。



伊藤 倫文(愛知県・40期)

[出身]愛知県
[抱負]人権擁護大会、司法修習、業際・非弁・非弁提携問題等対策本部、法律サービス展開本部、中小企業法律支援センターなどを担当します。会長を補佐し、日弁連が社会の期待に応えることができるよう全力で取り組みます。



飯岡 久美(広島・40期)

[出身]広島県
[抱負]家事法制委員会、貧困問題対策本部、教育法制改正問題対策WG、研修委員会、総合研修センター、市民会議などを担当します。会長を補佐し、特に家族法改正後に向けた各種課題、貧困問題などに、誠意を持って取り組みます。



足立 修一(広島・43期)

[出身]兵庫県
[抱負]死刑廃止・刑罰制度改革、刑事拘禁制度改革の本部や、刑事法制、接見交通権確立、公害・環境、子どもの権利などの委員会を担当します。基本的人権の擁護と社会正義の実現に向け、会長を補佐し日弁連の諸課題に誠心誠意取り組みます。



大神 昌憲(福岡県・48期)

[出身]福岡県
[抱負]弁護士職務の適正化に関する委員会、公設事務所・法律相談センターなどを担当します。会長を補佐し、日弁連の課題に全力で取り組んで、より信頼される弁護士、弁護士会および日弁連を目指します。




野呂 圭(仙台・53期)

[出身]宮城県
[抱負]人権擁護、災害復興支援、情報問題、秘密保護法・共謀罪、憲法問題、弁護士業務における情報セキュリティなどを担当します。基本的人権の擁護と社会正義の実現のために、会長を補佐し、全力で取り組みます。




坂口 唯彦(札幌・51期)

[出身]北海道
[抱負]再審法改正、取調べの可視化、オンライン接見、弁護人の取調べ立会い等を含む刑事司法、国際人権や政府から独立した人権機関の設置等の各分野を主に担当します。会長を支え、すべての分野での前進を目指す取り組みを進めてまいります。



大熊 伸定(愛媛・48期)

[出身]愛媛県
[抱負]市民のための法教育、労働法制、裁判迅速化法問題対策、個人通報制度実現、小規模弁護士会協議会などを担当します。会長を補佐し、日弁連が対処すべき諸課題に精一杯取り組みます。



理事

  • 日向  隆(東京)
  • 舩木 秀信(東京)
  • 石黒 美幸(東京)
  • 二瓶  茂(東京)
  • 村田 智子(東京)
  • 今井 智一(東京)
  • 山崎 岳人(東京)
  • 吉岡  毅(第一東京)
  • 納谷全一郎(第一東京)
  • 木野 綾子(第一東京)
  • 菅沼 友子(第二東京)
  • 秋野 卓生(第二東京)
  • 福島 正義(第二東京)
  • 六角 麻由(第二東京)
  • 岩田 武司(神奈川県)
  • 島崎 友樹(神奈川県)
  • 大塚 信雄(埼玉)
  • 島田 直樹(千葉県)
  • 篠㟢 和則(茨城県)
  • 石井 信行(栃木県)
  • 関 夕三郎(群馬)
  • 梅田 欣一(静岡県)
  • 丹羽 聡子(静岡県)
  • 三枝 重人(山梨県)
  • 山崎 勝巳(長野県)
  • 中村  崇(新潟県)
  • 西出 智幸(大阪)
  • 岩井  泉(大阪)
  • 林  尚美(大阪)
  • 岡田 一毅(京都)
  • 石橋 伸子(兵庫県)
  • 中川 勘太(兵庫県)
  • 嶋岡 英司(奈良)
  • 多賀 安彦(滋賀)
  • 松原 敏美(和歌山)
  • 谷口  拓(和歌山)
  • 奧村 哲司(愛知県)
  • 川合 伸子(愛知県)
  • 長谷部拓哉(三重)
  • 武藤玲央奈(岐阜県)
  • 堺  啓輔(福井)
  • 髙木 利定(金沢)
  • 浦田 秀幸(富山県)
  • 大植  伸(広島)
  • 鶴  義勝(山口県)
  • 井上 雅雄(岡山)
  • 尾西 正人(鳥取県)
  • 桐山香代子(島根県)
  • 德永  響(福岡県)
  • 祖父江弘美(福岡県)
  • 小畑雄一郎(佐賀県)
  • 中村 尚志(長崎県)
  • 井田 雅貴(大分県)
  • 河津 典和(熊本県)
  • 山口 政幸(鹿児島県)
  • 山田 秀一(宮崎県)
  • 野崎 聖子(沖縄)
  • 藤田 祐子(仙台)
  • 山田いずみ(仙台)
  • 鈴木 靖裕(福島県)
  • 金山 裕之(山形県)
  • 前田  毅(岩手)
  • 石田 英憲(秋田)
  • 伊藤 史行(青森県)
  • 松田  竜(札幌)
  • 清水  智(札幌)
  • 木下 元章(函館)
  • 兼平  史(函館)
  • 大箸 信之(旭川)
  • 佐々木涼太(釧路)
  • 佐藤 倫子(香川県)
  • 秋月 智美(香川県)
  • 白川  剛(徳島)
  • 津田 久敬(高知)
  • 和田 資篤(愛媛)



監事

  • 石原 俊也(東京)
  • 松本佐弥香(第一東京)
  • 小渕喜代治(群馬)
  • 内藤 欣也(大阪)
  • 小島 浩一(岐阜県)


新事務総長紹介

谷眞人事務総長(東京)が退任し、後任には、4月1日付けで岡田理樹事務総長(第二東京)が就任した。


岡田 理樹 (第二東京・40期)

日弁連においては、2020年度副会長のほか、事務次長、司法調査室副室長、常務理事などを務めました。これから2年間、職員、嘱託弁護士などと協働して渕上執行部を支え、市民にとって頼りがいのある司法、全国の弁護士が生き生きと活躍し、前途有為な方が法曹を目指すような司法を築くべく努力したいと思っています。



弁護士任官者の紹介

4月1日付けで次の会員が裁判官に任官した。


新井 宏基氏

70期(元東京弁護士会)
シティユーワ法律事務所にて勤務。
〈初任地 横浜地裁〉




第4回 弁護士業務妨害対策全国会議
2月20日 弁護士会館

日弁連・弁護士会・弁護士会連合会で業務妨害対策関連の委員会に所属する委員らが参加する全国会議を開催した。今回は1989年に発生した坂本堤弁護士一家殺害事件(以下「事件」)の救出活動、その後の弁護士業務妨害対策の歩みを振り返り、業務妨害対策の意義を改めて確認した。


救出活動を振り返って

小島周一会員(神奈川県、坂本弁護士と家族を救う全国弁護士の会事務局次長)は、弁護士会や日弁連は事件直後から、事件を弁護士業務に関連する重大事態と捉えて救出活動に取り組んだと話した。弁護士に対する攻撃は、弁護士を萎縮させ、ひいては市民の権利侵害につながることを訴え、救出活動が社会に広がったと語った。いかなる業務妨害も許さないという姿勢を日弁連が徹底して貫き、会員が恐れることなく業務にまい進できる環境を構築・維持しなければならないと力を込めた。


業務妨害対策の原点として

弁護士業務妨害対策委員会の瀧澤秀俊委員(東京)は、事件を契機として弁護士業務妨害という概念が確立され、日弁連に業務妨害対策委員会が設置されたことや、悲惨な事態が二度と起きないよう、業務妨害対策の取り組みを続けていることを報告した。弁護士業務妨害は誰にでも起こり得ると指摘し、各地で対策をさらに充実させてほしいと呼び掛けた。また、事件を知らない弁護士も増えているとして、原点である事件についての関係者の記憶や救出活動などの記録をアーカイブ化することが急務であると語った。


青木正人委員長(群馬)は、事件の教訓を次の世代につなぎ、弁護士業務妨害対策に取り組み続けていかなければならないと締めくくった。



日弁連短信

弁護士情報セキュリティ規程

「弁護士情報セキュリティ規程」が施行されます

本年6月1日、いよいよ「弁護士情報セキュリティ規程」が施行されます。本規程は、2022年6月10日に開催された第73回定期総会において制定され、成立日から2年を超えない範囲内において施行されることとなっていたものです。


本規程では、弁護士等に対して、①情報セキュリティに対する危険を把握すること、②「基本的な取扱方法(キホトリ)」を策定すること、③安全管理措置を講じること、④情報のライフサイクルの各段階で情報セキュリティを確保すること、⑤安全管理措置等の点検および改善をすること、⑥漏えい等事故が発生した場合には再発防止等の措置を講じることなどを求めています。


日弁連はこれまで全会員に向けて、①「解説 弁護士情報セキュリティ規程」(2023年3月)、②「情報セキュリティを確保するための基本的な取扱方法について」(2023年3月)、③副読本「弁護士のための情報セキュリティ入門」(本年3月)を作成し配布しています。ぜひご活用ください。


「キホトリ」を策定しましたか

本規程第3条第2項の「基本的な取扱方法(キホトリ)」とは、弁護士等が情報セキュリティを確保するために定めておく各自のルールのことです。本規程では、弁護士等に対し、キホトリを策定することを義務としているため、施行日である本年6月1日までにキホトリを策定していないと会規違反の状態となることになります。


キホトリで定める事項は、事務所の規模や業務の種類によって異なりますが、会員の負担を軽減しながら一定水準のキホトリを策定できるよう、日弁連会員専用サイト内業務関係中「情報セキュリティ」のページで、「基本的な取扱方法の例」として2つのパターン(弁護士1人の場合、弁護士複数人の場合)のサンプルデータを紹介しています。それを取捨選択または削除挿入していくことにより、30分程度で事務所オリジナルのキホトリが完成できるようになっていますので、活用してください。


なお、重要なのは形だけのキホトリを策定することではなく、弁護士一人一人が情報セキュリティの重要性や取り組み方法を見直すことです。また、一度キホトリを策定した後も、技術の進歩に伴って、常にその見直しを続けることが必要となります。


(事務次長 中村新造)



シンポジウム 消費者的事業者の脆弱性と法的支援の方策
1月31日 オンライン開催

arrow_blue_1.gifシンポジウム「消費者的事業者の脆弱性と法的支援の方策」


事業者間取引において情報力格差などの取引上の脆弱性を有する中小零細事業者(いわゆる消費者的事業者)については、消費者と事業者に二分する法制を前提とした現行の消費者保護法制での保護に限界がある。本シンポジウムでは、その法的支援の在り方について議論した。


被害実態の報告

消費者的事業者の被害の救済に取り組む会員らから、不動産サブリース、情報通信機器等の提携リース訪問販売およびフランチャイズ契約に関する被害事例が報告された。知識や経験、交渉力等が乏しく、消費者類似の立場にある消費者的事業者について、消費者契約法等によって救済できない現状への疑問が呈された。


消費者保護法制の適用等

大澤彩教授(法政大学)は、消費者契約法における事業性は客観的事実から判断されており、消費者的事業者が「消費者」として保護を受けることは難しいと説明した。また、取引の実情等を勘案して個別に適用範囲を拡張することも、法の適用範囲を不明確にし、取引相手の予測可能性を奪うとの理由から慎重な見解が有力であると述べ、消費者・事業者という属性に基づく二分化法制自体の妥当性を問い直していく必要があると指摘した。


パネルディスカッション

磯辺浩一氏(消費者スマイル基金事務局長)、髙良祐之会員(沖縄)が議論に加わり、消費者契約法上の「消費者」概念の拡張や、特定商取引法の改正または特定の取引類型の事業者を対象とした新法制定による救済の拡充などを議論した。また、消費者的事業者が被害を相談できる体制の整備などについても意見交換を行った。



日本の死刑制度について考える懇話会

本年2月29日、「日本の死刑制度について考える懇話会」(以下「懇話会」)が設置された。


懇話会は、国会議員、学識経験者、警察出身者、検察出身者、弁護士、経済界・労働界の有識者、被害者団体、報道関係者、宗教家および文化人ら計16名の委員で構成され、十分な情報を基に活発な議論を行い、日本の死刑制度のあるべき方向性について提言することを目的とする。2月29日、準備会および第1回会議が弁護士会館で開催された。


準備会では、懇話会設立趣旨の説明の後、名称および運営方法の決定とともに、設立趣意書が採択された。その後、委員から各自の経験等を踏まえた死刑制度に対する意見を交えて自己紹介がなされ、委員の互選により、井田良氏(中央大学大学院教授、刑法学者、前法制審議会会長)が座長に選出された。また、懇話会の事務を日弁連に委託することも確認された。


懇話会第1回会議では、死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部の小川原優之事務局長(第二東京)から死刑廃止に向けた日弁連の取り組みについて、笹倉香奈氏(甲南大学教授、刑事訴訟法学者)から死刑を巡る国際情勢について報告があった。


井田座長からは、今後の検討テーマとして①国際動向、②日本における死刑制度の現状把握、③被害者遺族の被害感情、④法的論点(憲法・人権論および刑法論)の4つが示された。


懇話会は月1回を目安に会議を開催する。今後、誤判の現状を把握し、死刑制度の存置と廃止それぞれの立場の刑事法学者、犯罪被害者、死刑廃止国の大使等からヒアリングを重ね、本年秋に提言を取りまとめることを目指すことが確認された。


(事務次長 籔内正樹)



2023年度 若手チャレンジ基金制度表彰式
2月15日 弁護士会館

若手チャレンジ基金制度は、今回で3回目の実施となった。「弁護士業務における先進的な取組等に対する表彰」の対象となった7名(ゴールドジャフバ賞2名、シルバージャフバ賞2名、ブロンズジャフバ賞3名)の会員の表彰式を開催した。


宇加治恭子副会長(当時)は、2023年度の同制度全体の申請数が587件に及び、若手会員が多種多様な活動について本制度を利用したことなど、全体の講評を行った。受賞者には副賞(最大30万円)のほか、記念の盾が贈呈された。



小林元治会長(当時)は祝辞として、表彰対象となった一つ一つの取り組みは今後の日弁連にとっての宝となるもので、同制度を後に続く会員の活力となる制度へとさらに発展させていきたいと述べた。


ゴールドジャフバ賞を受賞した石黒大貴会員(熊本県)が受賞者を代表して挨拶した。石黒会員は、孤立出産の後死亡した双子の死体遺棄罪に問われたベトナム人技能実習生の刑事事件において、最高裁で逆転無罪判決を獲得した活動について紹介した。「この事件は終わったが、今後も、孤立出産のない社会の実現に向けて、法曹としてできることを精一杯していきたい。真の共生社会とは何なのかを自分自身に問いながら力を尽くしたい」と意気込みを語った。


(研修・業務支援室  嘱託 本多基記)



セミナー
日本をとりまく国際通商情勢と法曹の役割
2月15日 オンライン開催

arrow_blue_1.gif セミナー「日本をとりまく国際通商情勢と法曹の役割」


近時、経済安全保障への注目の高まりや米中貿易問題等を背景に、国際通商法の重要性は一層増している。本セミナーでは、経済産業省の国際経済紛争対策室や国際法務室で国際通商法務に携わる弁護士らが、国際通商情勢や法曹の関わりについて講演した。


国際経済紛争対策室の業務

経済産業省通商政策局通商機構部国際経済紛争対策室(以下「紛争室」)は、経産省における国際通商法の専門部署であり、弁護士も在籍している。紛争室では、世界貿易機関(WTO)の紛争解決手続(DS)に日本政府を代表して対応するほか、各種委員会への参加や貿易ルールの改善に向けた取り組みなどを行う。


紛争室の平澤史子室長補佐は、経済安全保障、環境保護、デジタル、人権等の新しい分野と通商政策の接点が増え、紛争室の業務が拡大していると語った。


貿易救済措置

不当に廉価な輸入により輸入国の国内産業に損害が生じる場合、輸出国の国内販売価格との差を上限とする関税を賦課できる。しかし、世界的に保護主義的見地からの措置の濫用ケースも少なくない。西村祥平氏(通商交渉調整官)は、一国の措置の発動が他国の措置を発動させる連鎖が起こり得ることや、措置により対象企業が生産拠点を移すことで産業が空洞化し得ることを指摘した上で、国内企業の支援と国際通商規律の強化の重要性を語った。


新たな紛争解決手続

DSは二審制であり、紛争処理小委員会が審理し、その判断に不服があれば最終審の上級委員会に上訴できる。しかし、米国が上級委員会の委員選任を拒否しているため、その審理は現在停止している。一審で敗訴した国が、上級委員会に上訴することで意図的に判断を先送りする「空(カラ)上訴」によるDSの機能不全が指摘される。


国際法務室の清水茉莉室長(第一東京)は、国際通商のルールであるWTO協定(法の支配)と国際政治(パワーゲーム)が相克する国際通商情勢について語り、紛争解決機能の回復に向けた多国間暫定上訴仲裁アレンジメント(MPIA)の取り組みを解説した。



シンポジウム
女性の政治参画を進めるために今なにが必要か
ジェンダーギャップ指数過去最低の日本。政治分野は138位!
3月2日 弁護士会館

arrow_blue_1.gif シンポジウム「女性の政治参画を進めるために今なにが必要か~ジェンダーギャップ指数過去最低の日本。政治分野は138位!~


世界経済フォーラムが公表した、世界各国の男女格差の状況をまとめたレポートによると、2023年の日本のジェンダーギャップ指数は146か国中125位と過去最低であり、政治分野では138位であった。本シンポジウムでは、女性の政治参画における障壁・課題について検討した。


基調講演

三浦まり教授(上智大学)は、日本の政治分野における女性参画が世界最低水準である状況が続いていることを紹介し、背景には男性主導の政治における権威的なリーダー像などの固定観念や社会的役割に関する偏見があるという考えを示した。立法府に女性議員が少ないことの弊害としてジェンダー平等関連法の不整備を挙げ、女性リーダーを増やすことは男女が積極的に参画する民主政治を実現するために避けては通れないと強調した。


例えばクオータ制は数値目標に強制力を持たせる手段としては意味があるが、数値目標の次の段階としてジェンダー平等の規範・文化を社会に根付かせなくては、社会の揺り戻しに対抗できないと説いた。また、女性の政治参画の障壁となっているハラスメントや暴力などを排除するための法整備や、政治家を目指したいと思える制度づくりも進める必要があると述べた。


パネルディスカッション

若い世代の政治参加を促進する活動に取り組む能條桃子氏(「NO YOUTH NO JAPAN」・「FIFTYS PROJECT」代表)、宝塚市長の山﨑晴恵会員(兵庫県)、加藤慶二会員(第二東京)が加わり、女性の政治参画への障壁やその対策を議論した。登壇者らは、選挙活動中および当選後の内外からのハラスメントの実態を共有したほか、候補者選定過程の透明化や公職選挙法の再整備、相談窓口の拡充や弁護士によるサポートの充実などについて意見交換を行った。



シンポジウム
来たれ、リーガル女子!
女性の弁護士・裁判官・検察官に会ってみよう!
2月17日 弁護士会館ほか

arrow_blue_1.gif シンポジウム「来たれ、リーガル女子!~女性の弁護士・裁判官・検察官に会ってみよう!~」


近年の司法試験合格者に占める女性の割合は30%に届かず、女性法曹はいまだ少ない状況にある。法曹の魅力を伝え、女性志望者の増加につなげるべく、中学生・高校生を対象としたイベントを開催した。


法曹の仕事と魅力

女性の弁護士・裁判官・検察官が登壇し、それぞれの立場から業務内容や仕事の魅力、留学や出向など他業務の経験等を紹介した。


家事事件や刑事事件を中心に扱う丹羽聡子会員(静岡県)は、人の悩みに携わる弁護士の仕事はカウンセラーのような役割を担う側面があり、すべての経験が弁護士業務に役立つとして、学生の間に多くのことを経験して自分の中の引き出しを増やしてほしいと述べた。


企業法務を中心に扱う寺浦康子会員(第一東京)は、紛争が生じる前の予防法務における弁護士の役割について紹介したほか、アメリカへの留学やイギリスの法律事務所への出向などの国際経験を通じて視野を広げたことにも言及した。


猪股直子裁判官(東京地裁)は、民事裁判を中心に担当し、現在は労働部に所属していることや、他の裁判官や裁判所書記官との連携などのほか、法務省民事局に出向した経験などを語った。


伊藤梨奈検察官(法務省刑事局付)は、検察官の仕事は被告人に重い刑を科すことだと誤解されがちであるが、真実を明らかにして二度と罪を犯さないよう適正な処分を求める仕事であると話した。


グループセッション

女性法曹と参加者が少人数のグループに分かれ、仕事と生活の両立や法曹を目指したきっかけ、勉強方法などについて活発な質疑応答がなされた。赤尾さやか会員(東京)は、弁護士は関わる人の人生に影響を与える仕事であり、常に研さんが必要であるが、それが大きなやりがいでもあると語り、ぜひ法曹を目指してほしいと熱く呼び掛けた。



ブックセンターベストセラー
(2024年2月・手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1

企業における裁判に負けないための契約条項の実務

阿部・井窪・片山法律事務所/編著 青林書院
2

元裁判官が語る 判決書からみた民事裁判

中本敏嗣/著 新日本法規出版
3

有斐閣判例六法 Professional 令和6年版 2024

佐伯仁志、大村敦志、道垣内弘人、荒木尚志/編集代表 有斐閣
4

Q&Aでわかる!! 弁護士事務所の正しい会計・税務〔第2版〕

税理士法人みずほ/著 第一法規
5

弁護士法第23条の2照会の手引〔七訂版〕

第一東京弁護士会業務改革委員会第8部会/編 第一東京弁護士会
6

慰謝料算定の実務〔第3版〕 

千葉県弁護士会/編 ぎょうせい

弁護士業務における関係者の問題行動

東京弁護士会法友会/編集 新日本法規出版
8

企業不動産法〔第3版〕

小澤英明/著 商事法務
9 任意売却の法律と実務〔第4版〕 上野隆司/監修 高山 満、田中博文、大坪忠雄、村山真一、藤原 勉/著 金融財政事情研究会




日本弁護士連合会 総合研修サイト

eラーニング人気講座ランキング(総合)  2023年1月~2月

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順位 講座名 時間
1

LAC制度の概要

12分
2

交通事故を中心とした偶発事故対応弁護士費用保険について

38分
3

企業内弁護士の実務上の諸問題⑩ 企業内弁護士と契約レビュー AIは企業内弁護士の仕事をどう変えるか?  第1回 生成AIとリーガルテックの最前線

46分
4

企業内弁護士の実務上の諸問題⑪ 企業内弁護士と契約レビュー AIは企業内弁護士の仕事をどう変えるか? 第2回 法務部門が生き残るためには?

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できる!インターネット被害対応2020-入門編-

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交通事故における慰謝料額算定基準の構造と裁判例の傾向

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民事裁判手続IT化実務対応 これだけ受ければなんとかなる

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交通事故刑事弁護士費用保険について

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中小企業向け弁護士費用保険について

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10

【セレクトパック】中小企業法務の基礎 第2回 会社の基本的な運営に関連する法務

16分

相続分野に関する連続講座2022(第4回)遺言執行

109分


お問い合わせ先:日弁連業務部業務第三課(TEL:03-3580-9826)